「インバウンド神話」は崩壊 岡田知弘京都大教授が講演 いいまちねっと東山
「民泊」問題、観光公害、人口減少など、まちづくりに関わる問題が山積する京都市東山区で、岡田知弘・京都大学教授によるまちづくりについての講演会が20日、東山区内で開かれました。
住民団体「いいまちねっと東山」が主催したもの。
東山区に年間3000万人、オーバーツーリズムが地域社会に深刻な影響
岡田氏は、東山区をはじめ京都市内では、10年後、20年後に地域社会が維持されているのか、持続可能性の危機が進行していると述べました。その理由として、経済のグローバル化と新自由主義改革による、製造業の衰退・空洞化とともに、市のインバウンド観光重視の政策により、東山区には年間3000万人(1日当たり10万人)の観光客が訪れており、オーバーツーリズムの深刻な影響が生じていることを挙げました。
その上で、「インバウンド観光客を増やせば、地域経済も地方財政も潤うという神話は崩壊している」と指摘。ホテル・飲食業では、非正規雇用や低賃金従業者の比率の高さなどから、観光客や観光消費額が増えても法人市民税などの市の税収は増えない構造にあると説明し、「『住んでよし、訪れてよし』の持続可能な京都、なかでも東山区をどうつくるのかが、問われている」と述べました。
東山区や京都市のまちづくりの展望として、▽グローバリズム・大企業の「成長戦略」から、地域内経済の循環による市民生活第一の政策への転換▽グローバル経済の餌食となっている市内の土地利用・所有を計画的に制御し、良質な景観や住環境を守る▽区役所機能の強化と区自治組織、区民協議会で、住民が主人公のまちづくりの推進─などが求められていると述べました。