切断される前の野外彫刻モニュメント「空にかける階段’88-Ⅱ」

作家・住民の運動、共産党論戦動かす

 京都市美術館(左京区)の再整備工事に伴い、「耐震性や安全性」を理由に作品の根元から切断・撤去されていた野外彫刻モニュメント「空にかける階段’88─Ⅱ」について、市は1日、作品内部に構造補強をすることで作家との合意が得られたとして、「再展示」する方針を市議会に報告しました。作品の復元を求めてきた作家や住民運動と世論、日本共産党の議会での追及に押されたもので、市民らは「美術館として当然のこと」と話しています。

 作品は、高さ約11メートルの石柱2本で構成されています。文化環境委員会への資料によると、市は、倒壊防止のために石柱の約2メートル部分を地中に埋めてコンクリートで固定するとともに、作品内部の縦方向に鋼棒を複数本通し、地中のベースプレートとナットで緊結すると説明。この工法で、作品の形状をできるだけ損なわず、建築基準法の規定にのっとった強度を保てることから、作家の彫刻家・富樫実さん=北区=と合意したとしています。「再展示」場所も、当初の設置場所からほとんど変わらないと説明。当初の設置場所は、敷地に隣接する道路から約8メートルしか離れておらず危険なため、より安全な場所として隣接道路から約14メートルの場所に展示する計画です。

 この問題をめぐって、市は2017年8月、市民や芸術家団体の反対を押し切り、富樫さんの合意もないまま、作品を切断・撤去し、敷地内に放置してきました。市民からは「芸術を破壊する暴挙。作品を元に戻すべき」との声は止まらず、日本共産党も市の責任を追及してきました。こうしたもと、市と富樫さんや代理人で「京都アートカウンシル」代表の貴志カスケさん、京都彫刻家協会の江藤佳央琉さんとの交渉が続けられてきました。

 貴志さんは「市の当初計画では作品を10個に分割する、とんでもない計画でした。作品は復元展示ではなく、事実上新しい作品による展示になりますが、富樫さんの気持ちを踏まえ、市の方針に合意しました。これからも、市民の美術館となるよう力を尽くしたい」と話しています。

作品を切断するなと訴える貴志さん(右から3人目)ら=2017年5月、市美術館前