パブコメ「手法」「集約」に疑義 山科区・刑務所移転前提のまちづくり戦略/住民組織が市に申し入れ、「対話型」採用、「7割肯定」の根拠不明
京都市は、国に要望している山科区の京都刑務所の移転が実現した場合の同区のまちづくりプラン「京都刑務所敷地の活用を核とする未来の山科のまちづくり戦略」(以下「戦略」)の素案について市民意見募集を行い、この結果を受けて2月28日に「戦略」を策定しました。これに対し、区民らが同月27日、意見募集のやり方や集約に疑義があるとして、詳細を明らかにするとともに、全住民への説明や議論の場を求める申し入れ書を門川市長宛てに提出しました。
提出したのは「山科のまちづくり会議(準備会)」です。
申し入れ書によると、市が市民意見の応募方法(郵送、ファクス、電子メール、持参など)に定めていない「対話型パブコメ」が今回採用され、意見応募者487人のうち197人、約41%が「対話型パブコメ」となったことを問題視。「市民意見の信頼性にも関わる問題」と指摘し、「対話型パブコメ」がなぜ認められ、どういう形で意見の応募がされたのか、明らかにするよう求めています。
また、発表された募集結果では、素案に「全体の7割が肯定的」とされているものの、具体的中身が明らかにされていないとし、7割の根拠とともに提出された全ての市民意見の公表を要求。併せて、住民合意のまちづくりの立場から、拙速な進め方とならないよう求めています。
「山科のまちづくり会議(準備会)」は14日午後7時から、「戦略」の問題点を学び、会発足のための学習・講演会をラクト山科(山科区)のコミュニティールームで開きます。講師は、京都・まちづくり市民会議の中島晃弁護士です。問い合わせTEL075・592・5886(野原)
■住民不在、説明会は未開催/賑わい施設誘致に躍起
京都刑務所「敷地活用」計画は、市が条件も整わないまま強引に進めてきました。同刑務所(収用定員1477人)は、市営地下鉄東西線椥辻駅から徒歩8分の場所にあり、広大な敷地(職員住宅も含めると約11万平方メートル)を持つなど、「再開発」を進める上では〝絶好〟の土地。しかし、同刑務所は2001年に全面改築。数十年は使える建物で、国には移転・廃止計画はありません。
また住民合意も十分にありせん。市が16年に行った「区民アンケート」では、「移転させるべき」との回答は17・3%にとどまり、「現在のままで良い」の20・6%を下回る状況です。
ところが、市は13年以降、毎年国に移転を要望。この問題は、山科区全体のまちづくりに関わる問題にもかかわらず、素案をまとめる際の市民向け説明会は一切行っていません。
「戦略」自体も、大きな問題を持っています。移転を前提に、同刑務所を「山科の活性化の起爆剤」と位置付け、「敷地のポテンシャルを最大限生かすために、民間による活用が基本」と明記。「賑わいを創出する商業施設」をはじめとする「活用が望ましい」と提起しています。市は既に、JR山科駅周辺の高さ規制緩和方針を発表しています。
民間活力による商業施設導入には躍起となるものの、同区の高齢化率は30%を超え、市内では東山区に次ぐ2位となっているにもかかわらず、「戦略」には高齢者対策や高齢化に対応したまちづくりの視点はありません。
「山科のまちづくり会議(準備会)」の野原孝喜さんは、「これでは刑務所をテコに、住民不在のまま、まち壊しが進められる危険性が高い。住みよい山科を目指して、取り組みを強めていきたい」と話しています。