講演する伊藤大一准教授

 印刷通販のプリントパック(本社・向日市)の労働者でつくる個人加盟の労働組合が、同社からの二度に渡る不当労働行為事件で和解し、得た教訓と、世界の労働運動を学ぶ「『格差と貧困、差別を打ち破れ』世界を巡るユニオンムーブメント市民集会」が3月9日、京都市中京区のラボール京都で開かれました。

 全国印刷出版産業労働組合総連合会(全印総連)京都地連個人加盟支部・ユニオン京が、印刷産業で企業の枠を越えて加入できる、全国印刷関連合同ユニオンの結成を展望して開いたもので、他府県からの参加を含め93人が集いました。

 同京都地連個人加盟支部の井上俊幸支部長の基調報告に続き、中村和雄弁護士が、プリントパック事件和解の成果と韓国の労働運動の経験について語り、大阪経済大学の伊藤大一准教授が、米国での最賃15ドル(約1700円)運動を中心に「労働運動を活性化させる新たな潮流」と題して講演しました。

 中村弁護士は、労働組合法の規定があっても多くの中小企業では労組がなく、使用者と対等な立場で交渉できない現状があるなかで、労組を広げることの重要性と、増大する非正規労働者の最低賃金の引き上げが、労働者全体の底上げにつながると指摘。

 最賃アップが進む韓国では、時給1000円への賃上げの必要性が保守を含めて共通理解になっていることや、賃上げのための国からの中小企業支援があることなどを紹介し、「日本でも地域経済を豊かにするために最賃の引き上げが有効で、使用者にも理解を広げることが重要」と話しました。

 伊藤准教授は、新しい労働運動として、経済格差の広がりに抗議する「オキュパイ運動」(2011年)を背景にした社会運動的労働運動の出現を紹介。学校予算削減に抗議したシカゴ教師組合が、子どもの教育環境の改善を訴え、保護者や地域コミュニテイーなどとも連帯して世論を広げた経験を示し、分断ではなく連帯する運動の重要性を強調しました。

 集会では、全印総連中央執行委員会の菅沼慎也委員長、日本マスコミ文化情報労組会議の岩崎貞明事務局長が、連帯してあいさつしました。