申し入れ書を手渡す梶川氏(左)

 京都市が、18歳、22歳の若者の個人情報を宛名シールで自衛隊京都地方協力本部に提供(4月8日)した問題を巡り、市は同本部からの依頼に応じて、宛名シールと併せて同シールのコピーを渡していたことが分かりました。市はこれまで「シールは使ってしまえば個人情報は残らず、個人情報保護の観点から望ましい」と主張してきました。ところが、自衛隊の要請に自身の主張を簡単に投げ捨てたもので、個人情報保護より自衛隊への情報提供を最優先する市の姿勢が改めて浮き彫りになっています。

 コピー提供は、京都憲法共同センターが4月23日、シール提供について市への抗議の申し入れをした際、地域自治推進室の説明で分かったものです。

 推進室は、コピーを渡した経過について「同本部から昨年、(宛名シールを使っての郵送後に)問い合わせがあった場合に、控えがほしいと言われた」と説明。これまでシールで渡すことの利点を強調してきたものの、「業務完了後、残った場合のシールと併せてコピーも返却してもらう覚書を同本部と結ぶ(2月25日)ことで、コピーを渡す判断をした」と述べました。

 地方自治体には、自衛隊からの情報提供の協力依頼に応じる義務はありません。防衛大臣が昨年5月、全国の都道府県や市町村に「紙媒体または電子媒体での提供」を求めたものの、京都府内26市町村のうち16市町は、「個人情報保護の観点から」、住民基本台帳の「閲覧」にとどめています(2018年度)。全国1741市区町村のうち、シールで情報を提供しているのはわずか4自治体(17年度)だけです。

 ところが、京都市は防衛大臣の依頼を受けた後の同本部との協議の際、自ら宛名シールでの提供をもちかけた(昨年8月)ことが判明しています。自衛隊に〝積極協力〟する市の対応は、全国の中でも突出したものとなっています。

 同センターの申し入れ書では、「戦時中、地方自治体が戦争への住民動員の役割を担わされた」ことを挙げ、「市が憲法と地方自治法の本旨に立ち戻る」とともに、「自衛隊への個人情報提供を一切中止するよう」求めました。シールと併せてコピーを渡したことについて、梶川憲・京都総評議長ら12人の参加者は口々に、「なぜそこまで自衛隊にサービスをするのか」と訴え、市の対応を厳しく批判しました。