国民主権を全否定 自民・西田参院議員の異常な憲法観/「現行憲法は無効」が持論 侵略戦争を美化、「教育勅語」復活主張
大日本帝国憲法を賛美、「『核武装』の議論すべき」と主張
7月の参院選で改選を迎える、自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)は、国会やメディア、自身のネット動画などで、日本国憲法の国民主権や平和主義の理念を真っ向から否定し、憲法そのものを「無効」だと繰り返し主張しています。「日本会議国会議員懇談会」に所属し、自民党の憲法改正草案(2012年)の起草委員会幹事をつとめるなど、憲法9条を変え、「戦争する国」づくりを進める安倍政権の強烈な推進役です。
憲法審査会で「占領目的」と
西田氏の憲法論についてまとめているのが著書『総理への直言』(2013年10月発行、イースト新書)です。「憲法改正のウソ」の章で、「現行憲法は占領基本法」との見出しを立て、日本国憲法が制定されたのは「占領下で日本人に主権がない時代であり、GHQによって作られました」とし、憲法9条について「戦争放棄ではなく、国防という国家主権の放棄を宣言するものであり、独立国家としてありえないこと」と述べています。そして「国民の多くがこれが憲法ではないということがわかれば、その時点で、この憲法は無効になる」と主張しています。
国会の参院憲法審査会(17年12月)でも、「憲法が作られたのは、占領中にGHQが占領目的を完遂するため」とし、「日本の歴史観そのものをアメリカの、連合国の歴史観に変えていく(ことが目的)」などと述べています。
同著ではさらに、日本国憲法を「無効」にした後、「次に現れるのは大日本帝国憲法です」と主張。「天皇主権だから封建的と言われる方もいますが、日本の伝統や歴史や文化の象徴としての天皇に憲法の権威を求めている」と戦前の同憲法を賛美。そして、「自らの権利ばかりを主張する利己主義の蔓延が現代の日本の問題」「現在の憲法よりも我々に謙虚さを教えてくれる」「現在の憲法に欠けている非常事態に備える法体系や国の安全を守る仕組みもきちんと書いてある」(同著)と、大日本帝国憲法の復活を主張しています。
西田氏は日本国憲法の「国民主権」を批判する発言をたびたび行い、問題となっています。西田氏の主張は、「天賦人権思想」(人が人である以上当然に認められる権利として、人権の保障を受ける)の否定です。
自身のネット動画「週刊西田」の「一問一答」コーナー(12年12月)で、天賦人権の論法では、主権が「日本人」にあることを説明できないと述べ、「『国民主権』と聞くと国民が一番偉いのだと思ってしまう人が多すぎる」「国民主権はこの国の歴史と伝統を守ってきた先人から受け継いだ『相続権』と捉えており、当然、さまざまな義務と表裏一体」などとし、立憲主義(人権を守るために、憲法で権力を制限する仕組み)を否定しています。
〝人権を否定〟改憲案に反映
西田氏の考えは、自民党憲法改正草案に反映されています。「自民党改憲案Q&A」では、「(天賦人権論のような)規定振りを全面的に見直した」としています。
安倍政権は14年7月、歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を決めました。「海外で戦争しない」ことを大原則としてきた憲法の平和原則を壊すものですが、西田氏はそれ以前から、「解釈改憲」を唱えてきました。自衛隊が日本に存在しているのは事実上の憲法改正をしたからだとし、「こうした先例にならって、集団的自衛権の行使も実現できると解釈をすればよい」(同著)としています。
また、「核武装の議論」も西田氏の持論。西田氏の動画(「一問一答」16年4月)で、「平和な状態を維持するためにも軍事力の一つとして核武装の議論もすべき」「核という言葉の前で思考停止するのは国民の命を蔑ろにしている」などと述べています。
侵略戦争を美化し、従軍慰安婦問題を「ねつ造」と主張し、「教育勅語」の復活を唱えています。
従軍慰安婦問題については、「朝日新聞のねつ造報道から話が大きくなって日韓の外交問題にまで発展してしまった」(『一問一答』16年6月)と発言。17年11月の動画(『週刊西田』)では、LGBTのカップルを「生産性がない」と否定した、杉田水脈・自民党衆院議員と対談し、「従軍慰安婦は性奴隷ではない」「強制連行はなかった」などと杉田氏と語り合いました。
侵略の反省なく「近代化に貢献」
戦前、軍国主義教育を進める主柱となっていた教育勅語についても西田氏のホームページの「政策」で、「教育勅語の精神を活かす」とし「教育勅語もGHQにより廃棄させられました。内容的には、日本の伝統的価値観を伝えたもので、どの時代においてもどこの国においても通じるものです。日本人の誇りを取り戻し、次代に日本人の精神を伝えるためにも再度活かしたいものです」と述べています。
日本が朝鮮半島を植民地とした「韓国併合」(1910年)について、西田氏は、「朝鮮は日本の一部となりましたが、あくまでも両政府の合意のもとでなされたもの」「欧米のような植民地政策をとるつもりはなかった」「朝鮮半島の近代化に大きく貢献した」(18年12月『一問一答』)なとど述べ、侵略戦争を肯定・美化しています。
●日本国憲法を否定
- 現行憲法ができたのは、占領下で日本人に主権がない時代であり、GHQによって作られました。(中略)憲法9条は戦争放棄ではなく、国防という国家主権の放棄を宣言するものであり、独立国家としてありえないこと。(中略)国民の多くがこれが憲法ではないということがわかれば、その時点で、この憲法は無効になる(『首相への直言』)
- 自民党は憲法改正案を提案しました。国防の義務を明記し、国家の非常事態においても国民を守れる法体系を示しています。しかし、そもそも現憲法は、占領時代にGHQにより押し付けられたものであり、憲法の資格はなく、占領基本法というべきものです。本来、憲法とは国柄を表すものです。それを正すにはこうした歴史を国民が共有することから始めなければなりません(西田氏HP「政策」)
- 天賦人権の論法では、主権が「日本人」にあることを説明できない。「国民主権」と聞くと国民が一番偉いのだと思ってしまう人が多すぎる。(中略)国民主権はこの国の歴史と伝統を守ってきた先人から受け継いだ『相続権』と捉えており、当然、さまざまな義務と表裏一体(「一問一答」12年12月)
●侵略戦争を肯定・美化
- 「教育勅語の精神を活かす」…教育勅語もGHQにより廃棄させられました。内容的には、日本の伝統的価値観を伝えたもので、どの時代においてもどこの国においても通じるものです。日本人の誇りを取り戻し、次代に日本人の精神を伝えるためにも再度活かしたいものです(西田氏HP「政策」)
- 朝日新聞のねつ造報道から話が大きくなって日韓の外交問題にまで発展してしまった。(中略)日教組が悪いと言うよりもかつての文部省が自虐教育を推進したのであり、国をあげて「自国の否定」をやってきた。自民党は責任を持って戦後の欺瞞を解きほぐす努力を続けなければならない(『一問一答』16年6月)
- 1910年には韓国併合が行われて朝鮮は日本の一部となりましたが、これはあくまでも両政府の合意のもとでなされたもので、日本は欧米諸国のような収奪型の植民地政策をするつもりはありませんでしたし、むしろ日本は朝鮮半島に凄まじいまでの資金を投入して朝鮮半島の近代化に大きく貢献したのです(『一問一答』18年12月)
- 「西田先生は靖国神社を参拝するにあたり何を感じますか?」…私は東京にいるときはほぼ毎朝靖国に参拝しますが、毎朝そういった御製や言の葉を読んでいると、何かが自分に降りてくるような感じがします。(中略)今我々がこうやって平和に暮らせているのは靖国に眠っている英霊たちの献身があってこそなのだと、靖国に参拝する度に痛感します。GHQに押し付けられた現行憲法の出来た経緯をはじめとして、私は戦後の欺瞞を国民に伝えるべく議員活動を続けていますが、多くの国民は今の平和な状態が何故あるのかを考えようともせず、彼らを目覚めさせるまでには至っておりません。国を守るため、命を賭して戦った靖国の英霊には本当に申し訳なく思います(『一問一答』17年5月)