韓国、日本両国の文化交流に尽くしてきた京都市在住の舞踊家・金一志(キム・イルチ)が主宰する金一志韓国伝統芸術院の開校25周年記念公演が6月23日、京都市左京区のロームシアター京都サウスホールで開催されます。京都の観世流能楽師・片山伸吾、韓国の実力派アーティストを迎え、源氏物語を題材にした韓国舞踊による創作作品を初披露します。

 光源氏、六条御息所、桐壺の帝(みかど)、藤壺、葵の上などを登場させ、光源氏をめぐる愛憎劇を展開します。光源氏を、単なるプレイボーイとして描くことはせず、権力争いの激しかった貴族社会の中で、母親を幼くしてなくし、後ろ盾がないことによる深い孤独や挫折から女性に心の安らぎを求めたという解釈で演出しています。

 光源氏役は韓国古典舞踊の実力者の鄭鎭龍(チョン・ジンヨン)と片山伸吾。六条御息所を金一志が演じます。片山・源氏の場面では、能の所作で舞い、能楽森田流笛方・左鴻(さこう)泰弘が演奏。全体の音楽は韓国から招いた古典楽器奏者が担当します。衣装は、古い着物をもとに、すべて創作します。総監督は李鎭浩(イ・ジンホ)、総演出は金一志、振付は鄭鎭龍。

 舞台は3部構成で、第1部は、金一志が師事した故・林洱調(イム・イジョ)・社団法人韓国伝統舞研究会理事長に敬意を込めて古典作品を披露。新羅時代の仮面劇「處容(しょよう)舞」の5役を一人で舞います。第2部は源氏物語の創作舞踊。第3部は、韓国伝統打楽器の力強く、楽しい演奏で幕を閉じます。

 「源氏物語千年紀(2008年)の文化事業に参加し、源氏物語を作品化したいと準備してきました。歴史をもつ能の力を借りることで、光源氏の深い精神性を表現することができます」と金一志。

 2人の光源氏は「競争社会や孤独という現代的なテーマで演出しました。どこかに共感してもらえれば」(鄭鎭龍)、「異なるジャンルで動きも違い、合わせるのはなかなか難しいですが、お互いの精神性を理解し合うことで、一体感のある、良い舞台が出来ると思います」(片山伸吾)とそれぞれ語ります。

稽古中の(右から) 鄭鎭龍 、金一志、 片山伸吾

 午後4時半(4時開場)。6000円(前売り5000円)。同芸術院☎090・7873・3792。