福山和人弁護士
福山和人弁護士

 21日投票の参院選は最終盤を迎えるなか、安倍晋三首相は改憲を前面にすえ、9条への自衛隊明記を公然と訴えています。自民党の荻生田光一幹事長代行は16日、参院選で勝利すれば改憲議論を加速させるとしています。9条改憲反対を明確に掲げる日本共産党の躍進が今こそ、求められています。福山和人弁護士に改憲の狙いや参院選で日本共産党が伸びる意義などについて聞きました。

「集団的自衛権」は侵略の口実

 安倍首相が狙っている9条改憲の目的は、フルスペックの集団的自衛権を行使して米軍を守ることにあります。そもそも、集団的自衛権は、1965年ベトナム戦争、68年ソ連のチェコ侵攻、79年ソ連のアフガン侵攻、81年米国のニカラグア侵攻、90年湾岸戦争、2001年アフガン戦争、14年米国のイラク・シリア空爆など、一貫して大国の侵略の口実に使われてきました。

 そういう動きに対して、国際的には見直しの動きが強まっています。イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器をもっているという米国の嘘から始まりましたが、独仏露中は反対し、賛成した英国はブレア首相が退陣に追い込まれました。

 各国が米国への追随を見直す下で、日本政府の米国追随姿勢は国際的にも際立っています。だからこそ、米国は日本に米軍の肩代わりを強く求めるわけです。9条改憲によるフルスペックの集団的自衛権行使は日本の防衛とは全く無関係で、それは日本が米軍の手先となり他国を攻撃する汚れ役を担うことを意味します。

 そうなれば、日本が平和国家として営々と築き上げてきた国際的信用は失われ、日本に対するテロ攻撃の危険が一気に高まるでしょう。9条改憲は日本と世界の平和に逆行するものです。

首相旗振っても、改憲反対が「最多」

 とりわけ今、アメリカは中東のホルムズ海峡を通過する民間船舶の防衛のために、有志連合を結成する意向で、日本にも協力を打診したとされています。この有志連合に参加するとなれば、日本の自衛隊を派兵することになります。そこで軍事行動が起きれば、自衛隊がともにたたかうことになります。まさに、戦争か平和かの瀬戸際が目の前に迫っている下で、9条改憲を企む勢力を勝たせるわけにはいきません。

 京都府内の有権者に憲法改正の是非を問うた世論調査(18日、京都新聞)で、憲法改正は「必要ない」が最多で37・4%です。首相自らが改憲の旗を振っても、賛同は広がっていません。国民の中では、生活や年金、消費税の関心が高い。当然です。もともと憲法の改正権は国民にあるわけです。国民が求めてもいないのに、改憲を言うこと自体が筋違いです。

 しかも、政治家は、憲法によって拘束された立場です。憲法99条では、天皇をはじめ国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員に憲法尊重擁護義務を課しています。拘束された人間が、自分で鎖を外してと要求すること自体がおかしいんです。

9条生かした平和外交でこそ

 改憲問題で、一貫して原則的な立場を貫いてきたのは共産党です。自民党は、「憲法改正について議論する政党か、議論しない政党か」と盛んに言っていますが、改憲問題について最も議論してきたのが共産党です。改憲反対とともに、9条を生かした平和外交で、北東アジアや中東に平和な体制を作り、「核兵器のない世界」に貢献するという対案を示しています。

 戦前の暗黒時代から反戦・平和を貫いてきた筋金入りの党が共産党だと思います。この党を大きくすることが、改憲阻止に向けた最も確かな力です。