参院予算委員会で質問する倉林議員
住民避難計画問題で安倍首相を追及する倉林議員(2015年3月27日、参院予算委員会)

「対立ない」委員会に喝、「原発ゼロ法案」共同提出の原動力

 日本共産党の倉林明子参院議員(京都選挙区)は、原発再稼働を進める安倍政権と対決し、福島県出身の国会議員として、原発ゼロの社会を求める世論を背に再稼働断念を迫ってきました。54回の原発・エネルギー問題の質疑の中で、〝住民避難計画は不完全〟という首相答弁も引き出しました。この間、野党4党による「原発ゼロ基本法案」の共同提出など、市民と野党の共闘で安倍政権に対峙する状況が生まれています。

汚染水漏れで閉会中審査に

 論戦の始まりは2013年10月7日、経済産業委員会での閉会中審査でした。当時の同委員会では、原発のことは全く議論されず、自民と民主(当時)の筆頭理事が倉林議員に「この委員会は対立がないから」とまで言う状態でした。

 こうしたもとで、福島原発の汚染水海洋流出の問題が浮上し、現地漁業者が猛反発していました。閉会中審査を強く申し入れ、海外出張中の委員長にも連絡し、開かせることができました。

 委員会で質疑に立った倉林氏は、政府と東京電力に対し、汚染水の海洋流出を止めることに集中するよう要求。東電が、再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)の職員数(1200人)を維持する一方、福島第一原発の職員数を事故前の1300人から1000人に減らしていることを示し、「柏崎刈羽原発の再稼働はきっぱりやめて、(職員を)福島第一に回すべき」と迫りました。

 この質問直後の同月15日、東電は汚染水漏れの再発防止策として管理要員を80人増員することを発表。地元紙の「福島民報」「福島民友」も報道し、初質問で早速、国・東電を動かしました。

ヘリ・船使えずどう逃げるのか

 同委員会で再稼働反対や原発ゼロを主張するのは倉林議員だけ。その中で、国民世論を背に再稼働反対の論陣を張ってきました。

 圧巻だったのは、16年10月13日の住民避難計画をめぐる論戦です。予算委員会の質問に立った倉林議員は、同年8月の広域避難訓練の様子を示して安倍首相を追及しました。

 訓練では、福井県音海地区で悪天候によりヘリが飛ばず、舞鶴市成生地区でも波が高く船での避難が実施できなかったことを示すとともに、避難経路の図や訓練参加者の声を突き付け「実際どう逃げるのか」「こんな計画でいいのか」と迫りました。

 安倍首相は「本当に事故になった場合は、実働組織の対応」と開き直りましたが、「(避難計画は)完璧はないわけでございまして、常に強化をしていく努力を重ねていきたい」として、実効性の無い計画であることを認めざるを得ませんでした。

 また、全市民が避難対象となる舞鶴市では避難車両が確保できておらず、冬場には主な避難経路の一つ国道27号が渋滞することを指摘(14年3月13日、経済産業委員会)。

エネ政策の転換を迫る

 高浜原発の過酷事故による京都府のシミュレーションでは、5㌔圏内の避難完了まで最長8時間、5~30㌔圏内では20時間以上の自宅待機が発生すると予測していることを示し(15年3月27日、予算委員会)、「住民の被ばくは避けられない」と再稼働の断念を迫りました。

 巨大地震の震源域にある原発の危険性を指摘するとともに、国と東電による住民や避難区域外事業者への賠償打ち切りの撤回を求めてきました。また、原発推進の姿勢を許さず、国のエネルギー政策を転換し、原発ゼロの社会を実現するよう要求し続けてきました。

 18年3月9日に共産、立憲民主、自由(当時)、社民の野党4党は原発ゼロ基本法案を衆議院に提出。7月の参院選での共闘勝利、倉林議員の再選・同党躍進で、自民・公明党を少数にし、安倍政権を退陣に追い込むことで、再稼働をとめて原発ゼロを実現する展望が生まれています。

竹本修三さん
竹本修三さん

■原発ゼロ法案実現の国会に/大飯原発差止京都訴訟原告団長、京都大学名誉教授 竹本修三さん

 地震前後の地殻変動の研究をしてきた経験からいえば、現状では地震予知はできません。後に兵庫県南部地震(1995年)の震源となった場所で調査しましたが、前兆的な変化は捉えられませんでした。

 地震大国の日本において、いつ次の大地震が起こってもおかしくありません。福島第一だけでなく全ての原発は過酷事故の危険性を持っています。

 こうした状況下で、また、原発のコストが非常に高くつくにも関わらず、安倍政権が原発を推進するのは、核兵器のための原材料を保有していたいと考えているからだと思えてきます。

 そう考えると原発ゼロの実現を目指すことは、安倍政権による「戦争する国づくり」とのたたかいでもあります。このたたかいで、国民の世論と連帯し、国会で54回の論戦を重ねてきた実績は非常に大きいと思います。何とか倉林議員に再選を勝ち取ってもらい、原発ゼロ基本法案を実現できる国会へと変えてほしいと思っています。