京都のまち“これでいいのか” 住民運動に取り組む市民がアピール/現市政が招いた「観光公害」深刻、ホテル・民泊急増で景観破壊・住環境悪化
京都市政が引き起こしたホテル・「民泊」の急増で、景観破壊や住環境が脅かされるなど、深刻な「観光公害」が進む中、住民運動に取り組む市民らが11月27日、「京都が京都でなくなろうとしている」ことを憂い、「安心して住み続けられる京都のまちづくりのために力を合わせよう」と全国に呼びかける「京都を愛するアピール」を発表しました。
アピールでは、観光公害に対して、市が対策をとるどころか逆行し、「京都らしい町の趣やたたずまいが、ホテル業者など事業者の金もうけにさらされ、失われようとしている」と告発。京都のまちを守るために、「思想・信条、立場の違いを乗り超えて力を合わせよう」と呼びかけています。
呼びかけ人(第1次分)は、宮城泰年・聖護院門跡門主、三嶌太郎・三嶌亭5代目当主ら33人で、今後、全国から賛同者を募っていく計画です。
市役所内での会見には、京都・まちづくり市民会議事務局代表の中島晃弁護士、中林浩神戸松蔭女子学院大学教授、「植柳校跡地問題を考える会」世話人の大屋峻さん、「世界文化遺産仁和寺の環境を考える会」共同代表の桐田勝子さん、京都民泊対策住民ネットワーク事務局長の藤井豊弁護士らが参加しました。
中島弁護士が趣旨を説明し、「京都のまちがこれでいいのかと全国の人たちが心を痛めている。少なくとも3桁の賛同人を集めたい」と述べました。
「南禅寺・岡崎の景観と住環境を守る会」共同代表の東村紀美子さんは「同じ問題を抱える住民が一緒になってアピールできることが、本当にうれしい。アピールを力に、これからは共に運動を進めていける。今日は、その第一歩となった」と話しました。
■京都を愛するアピール(全文)
京都を愛する市民の皆さん。全国の皆さん。いま、京都らしい趣やたたずまいが失われ、京都が京都でなくなろうとしています。
市内のいたるところで、ホテルや簡易宿所などが設置され、許容量を超える観光客呼び込みの受け皿になっています。それだけではありません。ホテル用地の確保のために地上げが横行し、貴重な文化財や伝統的な京町家が取り壊され、住み慣れた町から出て行かざるをえない人が増えています。さらに、民泊・簡易宿所の乱立と撤退による空き家化によって、住民自治組織が崩壊する事態さえ生みだされています。ホテルラッシュによる地価高騰は、京都を若い世代が住めない町にもしています。
観光客の大幅な増加が、市民の暮らしの環境をおびやかし、観光公害と呼ばれる事態を引き起こす一方で、市内周辺部では、公共交通が確保されずに高齢化が進んでいることも見過ごせません。
しかし京都市は、そのことに何ら手立てを講ずることなく、宿泊施設の過大な拡充・誘致をさらに進め、地域の公共財である学校跡地などをホテル用地に提供し、上質宿泊施設誘致制度の創設により国内外のホテル業者の便宜を図っています。市民が作り上げた「新景観政策」の規制を緩和し、建物の高さ制限を緩めて再開発を押し進めようとしています。その一方で、暮らしの環境を守ってほしいと願う市民の切実な声には背を向けたままです。今、京都らしい町の趣やたたずまいが、ホテル業者など事業者の金もうけにさらされ、失われようとしています。私たちは、こうした深刻な事態が市内各地で起きていることを、このまま見過ごすことはできません。
京都を愛するすべての市民の皆さん。全国の皆さん。
京都に暮らす市民の生活と文化を豊かに実らせる、ほんものの「京都観光」を世界に発信し、「住んでよし 訪れてよし」の京都のまちをつくるために、また、安心して住み続けられる京都のまちづくりのために、思想・信条、立場の違いを乗り越えて、共に力を合わせようではありませんか。
いま、私たちは、そのことを心から呼びかけるものです。