整備費2兆1000億円(試算)をかけ、京都市内を縦断する北陸新幹線延伸計画が京都市長選の争点に浮上しています。地下水を利用している、酒造会社からは同計画に不安の声が広がっています。

 「掘ってみないと地下水が止まるかどうかも分からん計画だと聞いている。そんな計画を進めるのは無責任や」。京都市伏見区の老舗酒造会社の社長がこう語ります。

 同社含め京都市内の酒造会社は、地下数メートル~100メートル地点から地下水をくみ上げ、酒造りに使用しています。「おいしい京都の地下水」は、酒造りの根幹です。

 同計画で京都市市街地では、大深度地下法に基づき、地下40メートル以深を新幹線が通ることが想定され、地下水への影響が懸念されています。

 この社長は「住民や業者の声を反映しているとは思えない。なぜ行政は、こんな計画を勝手に進めていくのか」と憤ります。

 現職・門川候補のポスターを張った別の酒造会社の社員は、「鉄道運輸機構の説明会(昨年12月)が開かれたことは聞いている。酒蔵に影響はないようにお願いしたいが、本当に大丈夫なのか不安」と話します。

京都府内を縦断する計画の北陸新幹線延伸ルート。京都市内中心部では、大深度地下を通過することが想定されてます

 また別の酒造会社の社長は、「京都には酒蔵だけでなく、茶道の三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)もある。京都の名水が枯れるようなことがあったら世界の恥や」と語ります。

福山候補「新幹線より暮らし応援の政治に」

 「つなぐ京都2020」の福山和人候補は、同計画について、「いったん立ち止まって必要性、弊害の有無、住民合意、費用の相当性などの観点から十分検証する」と公約に明記。各地で「北陸新幹線延伸よりも市民の暮らしを応援する政治に変えよう」と訴えています。

 一方で門川候補は北陸新幹線延伸についてほとんど触れていません。告示日の出陣式であいさつした、自民党の下村博文・選挙対策委員長だけが「共産党候補が当選すれば、リニア、北陸新幹線京都駅ができなくなるかもしれない」と危機感をあらわにしました。

 門川候補は告示直前になって、京都市南部と向日市、長岡京市、宇治市を結ぶとした「環状ネットワーク」構想を突如発表。しかし地下鉄か地上鉄道なのかも示さず、総工費も不明。福山候補は「『お金がいない』と言いながら、なんぼかかるかも分からへん北陸新幹線や環状線をつくるという人に財政再建ができるわけがない。財政再建の王道は、市民の暮らしを応援すること」と訴えています。

(「週刊京都民報」1月26日付より)