「京都運輸支局あっての自動車会館。いったい京都市は何を考えているのか」 移転計画ないのに敷地活用再開発でパブコメ、門川市政トップダウン手法に自動車関係団体が猛反発
京都市はこのほど、伏見区にある国の2施設、京都運輸支局とその西側の京都拘置所について、移転を前提に民間活用による再開発を目指す「敷地活用案(素案)」をまとめ、市民意見を募集しました(1月30日まで)。ところが、同支局も拘置所を所管する法務省も本紙の取材に「移転計画はない」と明言し、当事者の意見を踏まえないまま、市民意見を募集していたことが分かりました。門川市政のトップダウン手法に同支局と関連がある自動車関係団体が猛反発しています。
市は、両施設のある市南部地域(油小路通沿道を中心に北は十条通~南は宇治川、東は高瀬川~西は国道1号)を企業集積を進める「らくなん進都」(地図参照)と位置付け、2015年には容積率の緩和もおこない、企業立地による民間主導の再開発を目指してきました。しかし、一定の企業進出はあったものの、まとまった土地が少ないことから、再開発は進展してきませんでした。そこで、市が目を付けたのが両施設です。
両施設の敷地面積は広大で、合計約4.6㌶、甲子園球場の約1.2個分に匹敵します。京都運輸支局は、府内のバス、タクシー、トラック運送事業の許認可や自動車の登録・検査業務を行い、検査場・駐車場も含むと敷地面積は約2㌶になります。京都拘置所も職員宿舎を合わせると2.7㌶の面積を有します。また、名神高速道路や第2京阪道路の各出入り口や市営地下鉄くいな橋駅、近鉄上鳥羽口駅にも近く、交通アクセスにも恵まれた立地です。
市は13年に国に対して、同拘置所の活用を要望。16年からは毎年、両施設用地の「有効活用の検討」を求める要望書を提出してきました。17年度には、企業へのアンケート調査を行い、併せて「経済界や学識者、地域などから意見を聴いた」として、昨年12月に両施設の「活用案」を作成。同月20日から、市民意見を募集していました。
支局長「移転はない」説明してきた
ところが、関係者への取材で、肝心の当事者や関係する自動車団体には意見を聞いておらず、一斉に反発の声が上がっていることが分かりました。
同支局の足利剛支局長は、「活用案作成に当たって、市からは何も意見は聞かれていない。現時点での移転はあり得ない」と言います。その上で、「市からはこの間、毎年移転の要望を聞いてきたが、その都度、『府民や業界団体など利用者の利便や、公共性を勘案すると、現在地に匹敵する代替え地確保は難しい。現時点で移転はない』と市に説明してきた。市は状況を冷静に判断してほしい」と話します。
同拘置所を所管する法務省矯正局総務課の法務専門官も「京都拘置所は裁判所へのアクセスもよく、宿舎は06年に建て替えて比較的新しい施設で、現在地が適地と考えている。市から代替え地の提案がない以上、移転はない」と言います。
自動車関係団体の意見聞かず
自動車関係団体からは、さらに厳しい声が上がります。事務手続きの利便性などから、同支局の北側に隣接する(株)京都自動車会館は02年、バス協会、軽自動車協会などが共同出資して株式会社を設立し、完成させたもの。現在、府タクシー協会、府レンタカー協会、近畿陸運協会など自動車関係の約40団体が入居します。しかし、市の「活用案」では、同会館用地は「活用」の対象外で、市は入居団体に意見を聞いていません。
同株式会社の株主「府自動車整備振興会」の会長で、「府自動車整備商工組合」理事長の城谷忠さんは「支局あっての自動車会館なのに、仮に支局だけ移転することになれば、入居する自動車関係団体にとってはマイナスしかない。いったい市は何を考えているのか」と言います。
頭越しにこんな勝手認められない
同じく株主の「共同組合京都個人タクシー協会」の理事長、諸木武司さんも怒りをあらわにします。「頭越しのこんな勝手な話はない。門川市長は、再開発でもうかる大手企業を喜ばせたいだけだろう。こんな案はとても認められない」。個人タクシー互助協同組合、協同組合個人タクシーみらい京都からも同様の声が上がります。
こうした声を市はどう受け止めているのか。本紙は、この問題を所管する市総合企画局プロジェクト推進室に対して、同「活用案」をまとめた経過の説明を求めましたが、期限(1月27日)までに回答がありませんでした。