安倍内閣は4月7日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、「緊急事態宣言」を行うとともに、「緊急経済対策」を決定しました。国会で経済論戦の先頭に立ってきた日本共産党の大門実紀史参院議員に、同対策の評価や中小企業支援や雇用を守るために何が必要なのかを聞きました。

消費税減税 内需支え最も効果、2カ月あれば実施可能

 安倍首相は、コロナ危機に際して、消費税の減税を少しは検討した様子ですが、結局、今回の対策でも見送りました。1日の参議院決算委員会での質疑で指摘しましたが、消費税の減税は国民、中小企業にとって直接の負担軽減となり、給付金と同じ効果があります。しかも、所得の低い世帯ほど負担減となります。暮らしの応援のためにも、内需を支えるためにも、最も効果的な経済対策です。与党の中には、消費税減税は実施まで時間がかかるので即効性がないという意見もありますが、間違いです。

 当局の事務方にも確認しましたが、減税決定から2カ月の準備期間があれば、実施は可能です。税金の申告は複雑にはなりますが、2カ年の納税延期をすれば対応はできます。事業者にとって、申告の手間よりも減税の恩恵の方が圧倒的に大きいのです。いまや消費税減税を求める声は、共産党だけでなく与野党議員全体に広がっています。引き続き消費税の減税を強く求めていきます。

 感染防止対策を考える上で、「自粛要請と補償は一体」ということを基本原則にする必要があります。そうでなければ、苦境に陥った人々の救済も、感染防止に実効性を持たせることもできません。

すべての人に「1人10万円」こそ

 しかし、安倍首相はこの原則を認めようとはせず、今回の対策は中途半端な内容となっています。例えば、所得が減少した世帯へ30万円の現金給付をするとしていますが、主な対象は、年収換算で住民税非課税水準まで落ち込む世帯などで非常に限定的です。その上、自主申告制で、支給までに相当時間がかかることが予想されます。これでは、仕事や収入を失った多くの人々に救済の手が届きません。わが党や他の野党が求めているように、緊急にすべての国民を対象に、1人10万円の給付が必要です。

 また、一斉休業のような事態になると、雇用調整助成金(労働者の失業防止のために事業主に対しての給付)の仕組みだけでは、労働者の雇用や賃金を守りきれなくなります。欧米のように労働者への直接給付で、所得を補償する仕組みの創設が求められています。ところが、政府はそこへ踏み出そうとはしていません。このままでは、非正規雇用を中心に雇止めや解雇が拡大する恐れがあります。

中小・個人事業主に給付が実現

 一方、対策案には、共産党の提案や現場の声を一定反映したものもあります。

 安倍首相は「個別の営業損失を補償することはできない」と言ってきましたが、今回、中小企業には最大200万円まで、個人事業主やフリーランスには100万円まで、給付する制度の創設が盛り込まれました。これは、1日の決算委員会で私が紹介したドイツをモデルにしたもので、早くも現場の方々から問い合わせがきています。ただ要件が厳しく、その緩和と1回きりの対策に終わらせないことが必要です。現場の方々を本当に支援できるものにしたいと思います。

 京都では観光業への緊急助成制度が創設され、東京都では、休業の要請に協力した小規模店などを救済するための「感染拡大防止協力金」を検討しています。こうした、自治体独自の取り組みに対する国からの助成措置が必要です。この点では、わが党の小池晃書記局長や私が国会で繰り返し求めてきた「地域臨時交付金」が1兆円の予算で創設されることになります。使い勝手の良い仕組みにするためさらに尽力します。

自民党政治の矛盾噴き出る

 医療や経済の危機で、これまでの自民党政治の問題点、矛盾が一気に噴出しています。医療や介護の現場のリストラを進め、危機対応能力を低下させてきたこともその一つです。この他にも、大企業の生産拠点の海外移転を応援し、国内産業の空洞化を招いたことや、賃金を抑え込んで内需を冷え込ませ、インバウンド頼みのいびつな経済にしてしまったこともあります。経済のあり方そのものが問われています。当面の要求実現とともに、国民本位といえる経済に変革する大きな構えと運動で、困難を打開していきましょう。