京都の老舗クラブ「CLUB METRO(クラブメトロ)」を支援するためのアルバム『Save The Metro Compilations』の制作スタッフとしてカバーデザインを担当したグラフィック・アーティストIPPIのコメントを紹介します。

 METROに行くようになったのは大学生だった今から25年ほど前。欧米からクラブカルチャーが入ってきた時代で、京都で音楽やファッションの感度が高い人は間違いなくメトロの存在は知っていて、同世代で面白い人は大抵クラブにいました。

 初めてドキドキしながらメトロに行った時のことは今でも鮮明に覚えています。ボロボロのジャージを着こなすおしゃれなカップルが颯爽とやってきてフロアに入った瞬間、音楽に合わせて見たことのないシンクロしたダンスを踊り始めました。男性がおもむろにバーでドリンクを買い、それを隣にいる女性にさっと手渡し、シェアした瞬間の動きがあまりにも美しく自然だったのです。クラブへの関心が芽生えた瞬間でした。

 クラブの魅力はフロアにいるお客さんが主役なんですね。ダンスするクラウドが表現者であること。DJはもちろん重要な空間の司祭者のような役割ではありますが、一方でその一部であり、つまり皆でその空間を共有する。そこに一番の魅力を感じました。そしてイベントごとに全く色が違うのです。

 メトロがあったからクラブに行くようになったというのが正直なところです。立地も名前もコンセプトも含め、お店のブランドイメージが素晴らしい。京都の若い学生の交流と発信の場でもあり、今後も絶対に無くなってはならない場所だと思っています。

 企画者のSinkichi氏からの要請があったので制作に協力させていただきました。15年ほど東京で暮らしていますが、京都に生まれ育った自分のセンスやスキルがきっと何か役に立つと思えたからです。

 僕らがクラブに行くのはポジティブになって生きる活力を養うためです。この未曾有のコロナウィルスによる苦難を乗り越え、必ずや近い未来にあの素晴らしいメトロの空間が復活することを願って、その時にこそ立てたい夢と希望の旗をイメージし、アルバムカバーのビジュアルにしました。虹色については調和というメッセージで使用しています。これは様々な人が集まるメトロの空間や存在意義にもつながるものだと思います。

 全曲を通して京都でしかない音楽だと思いました。今回のコロナウィルス危機をきっかけにこれだけの59組ものアーティストが協力し合って、このような素晴らしいアルバムとして形にできたことは、これまでのメトロや京都のクラブカルチャーの歴史としても非常にまれなことだと思いますし、未来につながるきっかけになると思っています。そんな感想をこのアルバムから感じてビジュアルに反映させていただきました。

『Save The Metro Compilations』Band campで販売しています。https://metrokyoto.bandcamp.com/album/save-the-metro-compilations