東日本大震災を機に東京から京都に移住し、今回、クラブ「CLUB METRO(クラブメトロ)」支援のためのアルバム『Save The Metro Compilations』の制作スタッフとして参加し、自らのユニット「omni sight(オムニサイト)」の曲も提供したベーシストでコンポーザーの佐藤元彦に、METROとの出会い、アルバムの感想などを聞きました。

制作に参加できたことは誇り

 今回の発起人、Sinkichiさんからこのお話をいただいた時に、ただただ、ありがたいことと思いました。

 個人的な話ですが、10年ほど前、なんのあてもなく京都に移住した自分にとって、ここに住みたい! と改めて強く思わせてくれたのが、他ならぬMETROで出会ったカルチャー、人たちとの交流から広がった自由で豊かな日々があったからで、そのMETROがなくなってしまうことは京都に住みたいと思った原点がなくなるのに等しいことです。ですので、そのMETROとそこに関わる人たちに少しばかりでも恩返しできればという思いもあって、今回制作スタッフとしても参加させてもらいました。

 思い返せば、僕が関東の学生だった1990年代、「京都のクラブカルチャーはヤバイらしい!」と東京でも耳の早い連中の間でもよく言われていて、自分にとって、そのカルチャーを知る入り口となったのが、Sinkichiさんも当時在籍していたバンドSOFT(ソフト)でした。様々なジャンルの音楽が見事に融合し、生バンドでありながらDJがフロアで創り出すダンスミュージックとしての純度を高める手法も取り入れた革新的なスタイルでした。

 ジャンルによって地域やハコ(=ライブハウス、クラブ)の住み分けが常識だった関東のバンドマンだった自分からすれば、バンドとDJというスタイルの違いや、演者とオーディエンスの垣根がないフロアという概念、それらカルチャーが混然一体となったパーティー(=音楽イベント)が自然に行われていること自体が衝撃でした。そして、それを現場でさらに醸成させる装置として機能したのがMETROという稀有(けう)な磁場と懐を持った空間とそこに集う人たちだったわけです。

METROが醸成した“自由と革新の音”

 METROで醸成された気風と精神が今もジャンルも世代も越えて受け継がれていることは、このアルバムに参加した59組におよぶ由縁のアーティストのサウンドを聴いて改めて感じます。京都という土壌でMETROを体験したからこそ生まれた自由と革新の音が確かに鳴らされています。今回、その一端として自分も参加できたことが本当に誇らしいです。

『Save The Metro Compilations』Band campで販売しています。https://metrokyoto.bandcamp.com/album/save-the-metro-compilations