東京で公演する予定だった人形劇団京芸の創立70周年記念作品「あっちこっちサバンナ」(各場面の合成写真)

 京都府による劇場の休業要請は解除(23日~31日)されたものの、本格的再開、劇団の公演実施のめどは立たっていません。劇団や劇場の存続、演劇関係者の仕事の継続が危ぶまれています。

 「秋も公演が出来なければ、年は越せない」と語るのは昨年10月に創立70周年を迎えた人形劇団京芸の事務局長、小林洋介さん。同劇団の収入の柱である1月~3月の幼稚園・保育園公演、5、6月の小学校公演が3月以降ほぼ中止に。4月には、昨年京都公演で盛況だった創立70周年記念作品の東京公演が、完売していましたが中止になりました。

 同劇団では近年、学校での鑑賞授業が減少してきたことにより、赤字が常態化。今回の公演中止で経営は危機的となり、劇団の「解散」も考えざるを得ない、と言います。

稽古や公演に多数の制限が

 劇団の会合、稽古が再開したものの、多くの制限があります。

 稽古場として利用されている京都芸術センターは20日に再開しましたが、使用定員は3人~10人に抑えられ、大声の発声、他者との接触などは避けるよう求められています。

 京都府の劇場に対するガイドラインでは▽混雑時の入場制限▽2㍍(最小1㍍)を目安にした間隔の確保▽演者の発声による飛まつ感染対策として前方席の使用を控える―ことなどを求めています。

 「子どもたちが舞台の近くにひしめき合って、肌を触れ合わせながら鑑賞することが楽しいのに、距離をとって公演が出来るのだろか。せめて収束後、行政の支援による鑑賞会を企画してほしい」。一人で全国の幼稚園、保育園、親子劇場での人形劇公演を続ける「くわえ・ぱぺっとステージ」の主宰者・つげくわえさんは言います。

 人間座スタジオで4月に予定していた広田ゆうみさんとのユニットの公演が延期となった二口大学さんも、「客席の半数以下しか使えず、それでもお客さんが来てくれるか分からず、とても収支が合わない」と話します。

 劇団とともに、舞台を支える、フリーランスのスタッフも厳しい状況に置かれています。

 音響の技術者、道野友希菜さんは「7月まで仕事はなくなり、8月以後も不透明。搬入用の車を売る人、転職の話をする人も出てきています。国の補償があればありがたいが、国はせめて国民がどう困っているのか真剣に実状を聞き、すぐに対策を考えてほしい」と話しています。

運営めど立たず、賃料補塡を

■THEATRE E9 KYOTO芸術監督 あごうさとしさん
実状を語るあごうさん

 「THEATRE E9 KYOTO」(京都市南区)の芸術監督・あごうさとしさんに劇場の実状と、支援のあり方などについて聞きました。

 6月、7月はごく少人数の企画をやり、8月から始められるかどうか、出演を予定していた劇団と話を始めている段階です。

 劇場は、貸館業だけでは赤字なので、カフェやオフィスにスペースを貸し、公演の技術指導、企業協賛などの収入でやりくりしてきました。4月からほぼ営業できず、経営は非常に厳しい状態です。

 現在、国や府から客席の間隔を確保するために、使用客席数を事実上、半分以下に減らすよう求められています。そんな状況で今後も利用してもらえるのかめどが立っていません。利用してもらえたとしても劇団の状況を考えると貸館料を下げざるを得ないでしょう。

小劇場連携しCFスタート

 国や府の要請には積極的に応えたいと思います。みなさん本当に厳しい状況にあると思いますが、劇場に対して貸館料の補塡をしていただければありがたいです。そうすれば、貸館料を下げ、劇団も利用しやすくなりますから。

 3年前から全国の小劇場のネットワークを構築し、各自が地域と協力しながら経営を改善し、劇団を支援していく方策を模索してきました。コロナ禍のもと、このネットワークを軸に、20日から、地域と共に歩む文化拠点、全国の小劇場の「再開」に向けて、1000万円を目標に、クラウドファンディングを始めました。期日は7月末までです。協力いただけるとありがたいです。

 クラウドファンディングのサイトhttps://readyfor.jp/projects/shogekijo-network