生の舞台に「鳥肌」 伝統芸能関係者が野外公演 茂山千五郎家が企画、230人が観劇
コロナ禍で入場者制限により屋内公演が困難ななか、採算度外視でいち早く生の舞台を見てもらおうと京都の伝統芸能演者による野外公演「WE’RE BACK KYOTO」が6月27日、京都市東山区の円山公園音楽堂で行われました。大蔵流狂言師の茂山千五郎家が企画したもの。2500人収容できる同会場に、身体的距離をとり、近畿2府4県から約230人が参加しました。
能楽金剛流の素謡「神歌」、若宗家・金剛龍謹(たつのり)の仕舞「高砂」で開幕。
茂山千五郎家は「鶏聟(にわとりむこ)」「仁王(におう)」「蝸牛(かぎゅう)」を披露。「仁王」では、国から配布されたマスクを「要らぬ」と仁王に寄進したり、故・茂山千作がファンだった阪神タイガースの成績が良くないと嘆き、「もっと力を」と祈願するなどして会場の笑いを誘いました。
長唄三味線の杵屋勝七郎、杵屋勝九郎、横笛の藤舎貴生らによる「松翁」の演奏後、日本舞踊若柳流五世宗家家元・若柳吉蔵が登場。コロナ禍収束の祈りを込め、この日のために創作した「寿(ことほ)ぐ都三番叟」(構成・作曲=藤舎貴生、振り付け=若柳吉蔵)を熱演しました。
落語家の桂よね吉が、客席の横で鳴くカラスに「うるさいな」と突っ込みながら、鳴り物入りで「七段目」をにぎやかに語れば、桂米二は周囲から聞こえるチエンソーの音などもろともせず、「時うどん」を悠然と演じきりました。
茂山家とも交流があるにっぽん画家の山本太郎は観劇の感想を「この間、Youtube配信に挑戦するなど苦労してきたのを知っているので、生の舞台ができたことは感慨深い。最初の金剛さんの謡で鳥肌が立った」と語っていました。