実行委員会に参加する「中国人戦争被害者の要求を支える京都の会」の展示企画で、桐畑米蔵事務局長(左)に取材する「録」のメンバー

宮城門主らにインタビュー「40年の歴史の重み感じる」

 今年40回を迎える「平和のための京都の戦争展」(同実行委員会主催)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、例年の展示、講演や文化企画ではなく、関係者に取材した映像をインターネットで配信する形式で開催します。映像配信に向け、立命館大学映像学部の学生でつくる自主サークル「映像制作団体『録(ろく)』」(8人)のメンバーが、新たな協力者として活躍しています。

 戦争の歴史を学び、平和な世界をどうつくるか―毎年、戦争や被爆の体験を聞く貴重な機会や、平和についてあらためて考える場を市民に提供している同戦争展ですが、例年とは違う趣で、独自のドキュメンタリービデオを制作し、ネット配信します。

現役学生が取材に奔走

 ビデオ制作を担うのが「録」の学生たち。重さ10キロを超す撮影機材を担いで、呼びかけ人や参加団体の取材に出向き、撮影とインタビュー、その後、編集も行います。

 「録」は昨年、代表の藤森俊哉さん(19)が呼びかけて立ち上げ、メンバーは、全員2回生です。直接、戦争体験者から話を聞く機会が少なくなっていることに危機感を持ち、「生の声、実際の感情を映像に残し、戦争を知らない若い人にリアルに伝えたい」との問題意識がありました。

 「学生と戦争」をテーマにしたドキュメンタリーの制作を構想し、昨年の京都の戦争展で、学徒出陣で戦場に向かった岩井忠熊立命館大学名誉教授の特攻体験を聞く企画に参加。その縁で今回の企画の協力依頼を受け、「研究テーマであり、映像に残すことで地域にも貢献できれば」(藤森さん)と応じることにしました。

 宮城泰年聖護院門跡門主や第1回(1981年)の実行委員会から関わる参加者らに取材を行った藤森さんは、「(戦争展)40年の重みを感じます」と語ります。

「録」の藤森さん(左)と中嶋さん

 今年は、実際の展示企画が少ないなか、実行委員会参加団体の「中国人戦争被害者の要求を支える京都の会」が7月10~14日に、中国人強制連行写真展を京都市内で開催しました。期間中の取材を藤森さんと担当した中嶋翔太さん(19)は、強制労働に従事させられた被害者、遺族らの補償・賠償を求める交渉が現在も続いていることを知り、「戦争は遠い昔のことと思っていたが、まだ終わっていないと感じた」と言います。

 この日は、1時間を超す取材となりましたが、DVDには3分で収録する予定。撮影の次は、戦争展のテーマにある「未来へ」に焦点をあて、編集作業に移ります。「僕らの人生の倍はある長年の活動を短い時間に凝縮して伝えられるか、難しい」

 取材を通して、京都の戦争展の歴史の一端に触れた藤森さんは、地域にある身近な戦争との関わりを知るきっかけとなるのが戦争展だと思うと話し、「映像を通して多くの人に興味を持ってもらう機会にしたい。私たちが次の世代、未来につなげる架け橋になれれば」と語っています。

 映像作品は8月14日公開。平和のための京都の戦争展実行委員会のホームページから視聴できます。