【新型コロナ京都フォーラム呼びかけ人に聞く】惨事に便乗“不要不急”策が横行/岡田知弘・自治体問題研究所理事長
「新しい政治・経済のあり方」こそ必要
京都自治体問題研究所の研究者や弁護士の呼び掛けで設立された「新型コロナウイルス 京都フォーラム」がこのほど、動画投稿サイト「YouTube」に6つのミニ講座を配信しました。呼び掛け人で各講座の講師に、講座のポイントなどについて順次、インタビューします。1回目は、フォーラムの共同代表で、「コロナ禍にいかに立ち向かうのか―地域・自治体の視点から」の講義を行った岡田知弘・京都橘大学教授(京都大学名誉教授)です。講座の強調点とともにフォーラム設立の目的について聞きました。
フォーラムは、コロナ禍のもとで住民の暮らし・生活がどうなっているのか、各講師が自分の専門領域から、足元の実態等の調査分析結果を報告し、自治体や各団体に提言するために設立しました。
感染拡大の防止策は、国だけでなく、京都府など地方自治体が独自でやれることが多くあります。ところが、その対策の基になる府の公表データは、非常に粗いものでしかありません。例えば、感染者分布をとってみても、府内の市町村ごとの状況は示されていません。地域によって、年齢構成、医療体制、住環境も違うのに、これで適切な対応が取れるでしょうか。失業、廃業、休業などの感染症や「補償なき自粛」強制による二次的被害についても、府や京都市がどこまで全体を把握・対応しているのか不明です。私たちの足元の状況はほとんど分かりません。
しかし、京都には幸い、多様な分野の専門家がいます。それぞれの方に、情報を収集・分析してもらい、YouTubeを使って住民の皆さんに広く知ってもらう。そうすれば、市民レベルで科学的な対応ができるようになるでしょう。秋にはシンポジウムも予定しています。また、提言を行政に伝え、自治体を動かしていく一助になればと考えています。
問われている自治体の役割
私の講座では、コロナ禍で改めて浮き彫りになった安倍政権の異常性や無策ぶりを批判し、地方自治体の役割、存在意義が問われていると強調しました。
安倍政権は、PCR検査や医療体制の強化には本気で取り組んでいません。その一方で、緊急事態条項を盛り込む改憲論議を進め、財界から要望の強かったスーパーシティ構想を実現するための国家戦略特区法「改正」を強行するなど、文字通り「不要不急」の政治・経済対策を横行させています。講座では、安倍政権の手法を「惨事便乗型政治主義」と名付け、批判しました。併せて、政府が進めようとしている「ポスト・コロナ」戦略(「骨太方針2020」)が、医療・衛生・地方行政でのデジタル化推進や広域的行政サービスの展開などを盛り込み、財界の要求に沿った危険な代物であることを解説しています。
こうしたもと、「住民の福祉の向上」を目指すことを最大の責務とする自治体の役割が問われるのは当然です。しかし、府・京都市がその役割を果たしているでしょうか。足元の「被害」状況をどれだけ詳細かつ包括的に把握しているのか。講座では、ずさんな実態の一端を明らかにしています。
その上で、締めくくりに、住民の命と暮らしを守るための社会運動の構築を呼び掛けています。必要なのは、政府のいう「新しい生活様式」ではなく、「新しい政治・経済のあり方」であり、住民の命と暮らしを優先した方向に転換することです。まずは京都からスタートさせ、同様の動きが全国に広がっていくことを期待しています。