東部丘陵地内で計画されているアウトレットモール予定地(点線部分)=2017年7月撮影

 城陽市の東部丘陵地(420㌶)では新名神高速道路開通とともに、大型商業施設のアウトレットモール建設計画などの大型開発が進められています。同地の開発にあたり、専門家は水害拡大の危険性を指摘し、市民からは水害と交通渋滞への懸念が広がっています。

 2023年度の新名神高速道路開通に合わせ、アウトレットモール(25・4㌶、24年春開業予定)、隊列トラック物流拠点などの青谷先行ゾーン(41㌶)開発、木津川運動公園(14㌶)、スマートインターチェンジや東部丘陵線などの道路開発などが相次いでいます。

 アウトレットモールは「三菱地所・サイモン株式会社」(東京都)が計画しているもので、市は7月に開発基本計画の協定を締結し、8月3日から事業者が工事着手しています。

 城陽市の東部丘陵地開発の見直しを求める市民グループ「城陽東部丘陵地開発問題連絡会」(岩佐英夫代表)は、7月末から開発の見直しを求め、要望署名運動を展開しています。

アウトレットモールより洪水なんとかして

 最も市民の反響が大きいのは治水問題です。アウトレット下流に位置する古川流域の市街地は長年、浸水被害に悩まされてきました。2012年8月の京都府南部豪雨では、古川流域の寺田地域で床上浸水159戸、床下浸水387戸の被害が発生しました。広大な東部丘陵地の開発に、治水の専門家はじめ市民からも不安の声が広がっています。

 署名した住民からは「また水害で悩まされるのは嫌や」「アウトレットよりも洪水をなくすほうが重要」と声が寄せられています。

 また、関心が高まっているのは、交通渋滞問題です。城陽市を南北に縦断する国道24号と府道69号は現在も渋滞が頻繁に起こっています。

 三菱地所グループが全国9カ所で展開している「プレミアム・アウトレット」のうち近畿では、神戸市北区の神戸三田(31・7㌶、約210店舗)、大阪府泉佐野市のりんくう(13・22㌶、約250店舗)があり、利用者は年間約600万~700万人。三田のアウトレットでは、07年の開業以来、周辺地域や高速道路で交通渋滞に悩まされてきました。

休日は大渋滞が日常化、地域経済の貢献も少ない

 渋滞問題に取り組んできた日本共産党の金沢治美元神戸市議は、「開業以来、特に休日は大渋滞が常態化しています。地元の企業も入っておらず、地域への経済貢献は少なく、住民は渋滞が増えたことで悲鳴を上げています」と話します。

 滋賀県竜王町の三井アウトレットパーク滋賀竜王(三井不動産商業マネジメント運営)は、18㌶で237店舗。10年の開業時は渋滞が大問題になりました。

 同町の日本共産党の橘せつ子町議は、「開業当初は、町中で大渋滞となり、町民生活が大混乱しました。地元住民はあまり利用せず、多くが他自治体の利用者です。地元企業は入らず、地域経済や町の税収に大きな貢献はありません」と語ります。

 「連絡会」は8月6日、水害拡大への懸念と交通渋滞問題に市民の関心が広がっているとし、雨水を下流へ流さない計画へ変更することや、交通渋滞を招く開発の見直しなどを求めて、城陽市に申し入れました。

 「連絡会」代表の岩佐英夫弁護士は、東部丘陵地をめぐっては、山砂利採取跡地に産業廃棄物が大量に投棄されてきた歴史的経過があるとし、「山砂利採取や産廃投棄に加え、アウトレットの開発など業者が大もうけするための計画を行政が容認・推進してきました。産廃全量撤去とともに、開発計画を見直すべきです」と話します。