地域の命綱 南丹市・美山診療所「入院病床」「老健」維持を 住民集会でアピール
「機能維持」求める署名 町有権者の過半数超に
南丹市美山町で唯一、常勤医がいる中核医療施設「美山診療所」(公設民営)を来年度から直営化する方針を同市が打ち出しています。直営化にともない、病床や老健施設が廃止される見込みであり、地域住民は「体制の縮小は住民の命と健康を切り捨てるもの」と訴え現在の機能を維持するよう求めています。8日には、住民団体「美山の医療を守る会」が集会を開催し、地元住民ら161人が参加しました。
同診療所をめぐっては尾嵜博医師が高齢のため退任意向を示しており、後継確保が課題となっていました。今年4月から中村真人医師が赴任し、2人体制となっています。
同市は、来年4月から国保診療所として直営化し、経営の負担を軽減することで医師確保を目指す方針で、25日開会の同市議会12月定例会に直営化に必要な議案提案を行う予定です。
しかし、直営化にともない診療所の機能を外来中心として病床(4床)は廃止する方針を示すとともに、15床の病床を備えた老健施設は委託するとしていますが、委託先は見つかっておらず事実上廃止の見込みです。
訪問診療・介護などの既存サービスについては、維持を検討しているとしますが、具体策は示されていません。現在の無料送迎は、継続するかしないかを含めて方針を検討中です。
集会では、京都医労連の坂田政春書記長が講演し、美山町は南丹市域の約半分を占め、非常に広域であると強調。同じ面積規模で全国の医療提供体制と比較すると、同町に必要な診療所数は約2・7、医師数では約10人になると指摘。現状の体制そのものが脆弱(ぜいじゃく)であり、「美山の医療はもっと高いレベルを目指すことが大事」と指摘しました。
その上で、現機能の維持を求める住民要求は無理難題ではないと強調し、「当たり前の要求。でなければ暮らしていけない」と訴えました。
同会事務局の岡本達樹さんは、「機能維持」を求める署名が、1週間で同町有権者の過半数を超える1791人から寄せられた(合計2383人分)と報告し、「熱い思いと切迫した願いの証だ」と強調しました。
両親を30年にわたり在宅介護してきた女性がメッセージを寄せました。今年亡くなった母親は同診療所の往診や在宅リハビリを利用し、容体が悪化した際には無料送迎で診療所へ行って入院して様子を見るなどしていたと語り、「リハビリして、ショートステイで休憩、ちょっとだけ入院もできる機能をそろえた診療所があったから高齢化が進んだ地域で安心して暮らせると強く感じた」と訴えました。
診療所医師「入院病床は絶対に必要」
会場からは中村医師が発言。同町には高齢者の独居や夫婦のみ世帯が多数いると訴え、「老健がなくなると皆さん困る、市長にも伝えた」と語りました。
また、発熱や食事が喉を通らない高齢者が診察に訪れた場合、「家に帰すのはとてもじゃないが心配でできない。2、3日病床で預かる。病床は絶対に必要だ」と強調しました。
また、自身が働き続ける意思を示しているにもかかわらず、市長が4月から雇用を継続しない方針を示していることについて、「要請があれば残りたいと思う」と述べました。
同「守る会」代表世話人の北川弘美さんは、機能の維持とともに、同市が直営化に伴い現職員の雇用を維持せずに新たに募集するとしていることについて、「22年にわたり診療所を守ってきてくれた。これほど薄情なことはない」と雇用維持を訴えました。
(「週刊京都民報」11月15日付より)