テラエナジーのポスター

 地球温暖化防止にむけ、脱炭素が世界的な課題となっています。日本で電力の小売りが2016年から自由化されたことで、各地で原発や石炭火力によらない、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの電気を扱う新電力会社が設立されています。府内で奮闘する、新電力会社に話を聞きました。

 電力で人をつなぎ、地域貢献したい──「株式会社TERA Energy(テラエナジー)」(竹本了悟代表、本社・京都市右京区)は、浄土真宗のお寺のお坊さん4人が2019年6月に設立。10人の従業員で、京阪神を中心に東北から九州まで、約900軒に電力を供給しています。

 テラエナジーは、電気料金の2・5%を団体などに寄付する「寄付付き電気」が特徴です。寄付先は、「京都自死・自殺相談センター」「反核ロックフェス 大マグロック」「バザールカフェ」「NPO法人全国てらこやネットワーク」など、環境や地域コミュニティー作りなどの活動に貢献する30団体。顧客はこの中から、寄付先を選べるようになっています。

半額の世帯も

 もう一つの特徴は、低額の料金設定。大手電力会社をはじめとする、ほとんどの電力会社では3段階の固定単価で電気を販売していますが、テラエネジーは「市場連動型」という料金算出の仕組みを採用していることです。

 電気は、再エネとFIT電気を中心に扱う「みんな電力」(東京都)から購入しています。FITは再エネで発電された電気ですが、国が定める価格で電力会社が一定期間買い取る「固定価格買取制度」で、

一般の電力料金に「再エネ発電賦課金」として国民負担となっているため、再エネとは区別されています。

 国内で唯一の卸電力取引市場「日本卸電力取引所(JEPX)」での30分おきの取引価格と連動した電力量料金単価で、契約者の料金を算出するシステムを導入。「電気予報」を利用者に送信し、電気の安い時間帯に利用することも促し、料金が半額になった世帯もあります。

TERA Energyの社員ら。前列中央が竹本代表取締役

 広島県で、オンライン法要などコロナ禍で新しい寺の在り方を探っている住職の日野浩爾さん(41)は、寺の電気料金は年間50万円から3分の1まで下がったと言います。「経済的に助かるだけでなく、地域や社会に貢献できるということがイメージアップにもつながり、時代にもフィットしていますね」と話しています。

 竹本代表がテラエナジーを立ち上げたきっかけは、環境についての学習会で講師を務めた気候ネットワーク理事から、ドイツの地方都市で電力自由化で会社を立ち上げ、赤字のバス路線を黒字化した話を聞いたことから。「収入の一部を活用し、自死防止等の活動に寄与したい」と起業。しかし、経営やシステムの知識は全くなく四苦八苦。気候ネットワークや支援者からノウハウを得て、1年かけて収支を改善しました。

毎月百軒が

 事業計画の採算ラインは2000軒。今、毎月100軒の新規申し込みがあり、今年末には達成の見込みです。「ハードルは高いですが、銀行の融資返済までは頑張らないと」と慣れない会社経営に頭を抱えながらも、意欲的です。「原発や石炭によらない電気を選ぶことは地球を変えること。電気を切り替えるだけで、気候危機を防ぐ大きな一歩になる。同時に環境団体や自死防止に取り組む団体への理解者も増やしたい」

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電力も地産地消で

■NPO法人気候ネットワーク理事 豊田陽介さん

 2016年4月から私たちの家庭も含めた全ての需要家ヘ電気の小売りができるようになりました。電力自由化以降、設立された電気の小売り会社を新電力と言います。全国で約720社が設立されています。価格競争だけでは大手に太刀打ちできませんが、地球温暖化防止を目的に、再生可能エネルギーを重視し、少しでも安いことや社会貢献、地域活性化につながる特徴を持っています。

 すでにヨーロッパではEUから電力自由化の指令も出ており、新電力事業が盛んです。ドイツでは、自治体が出資する都市公社が全国の約半分の配電網を所有しており、小売事業者はこれらの配電線を利用して電気を顧客のもとに届けます。公社の収益で赤字の路線バスを維持している都市もあり、自治にも貢献しています。

 日本では、昨年4月から送配電部門の分社化が行われ、今後は新たな配電事業者の参入も予定されています。再エネを使った電力の地産地消が広がることを期待したいです。

「週刊京都民報」1月3日付より