1983年以来、子どもたちの成長を育む南加茂台保育園(木津川市)

 木津川市が進める公立保育所の統廃合・民営化計画で、廃園対象になっている保育園のある旧加茂町南加茂台(ながもだい)。「保育園は地域の宝」と存続を求める声をもとに、住民らが運動を準備しています。

 南加茂台は、約40年前に入居が始まったニュータウン。保育園、小学校があり、中心部にスーパーや郵便局など公共施設、医療施設も充実した住環境に定評があります。

 現在、高齢化の課題と併せ、住民から南加茂台保育園の廃園問題に不安や疑問の声が上がったことを受けて、日本共産党支部が昨年2月から、住民アンケートと保護者アンケートに取り組みました。

住民アンケート「存続」が97%

 住民アンケートは、廃止の有無、市への要望などについて問う用紙を約2000世帯に届け、78人が回答。計画を知る人は75%、存続を願う人は97%を占め、「子どもの声が聞け、明るい町が好き」「保育園の存続で若い人の入居が増える」「他の地域からも入所を受け入れており、利用者にも地域にも必要」などの意見が寄せられました。

 保護者に対しては、門前で用紙を手渡し、18人から回答を得ました。「待機児童も多く、廃止すべきでない」などと存続の願いを17人が、地域からも存続の願いがあることには全員が「賛同する」と表明。また、保育内容や保育士とのコミュニケーションを評価する声が多数寄せられました。

 このアンケートを通じ、他地域から車で送迎している保護者の中には、送迎時の苦情を気にし、「地域に迷惑をかけている。存続を求めてもいいのか」という遠慮の意識があることもわかったという稲葉明子さん(62)は、「お互いの思いを知り合うことが大事。地域にあってほしいと伝え、一緒に声を上げたい」と話します。

子ども人口増統合の延期も

 同市は、行財政改革の視点から効率的な運営が求められるとして、12の公立保育園(公設民営含む)を24年度に4園にまで減らす「公立保育所民営化等実施計画」を17年に策定。南加茂台保育園は、151人が在園。現在7つある公立保育所の1つで、21年度の検証期間を経て、いづみ保育園との統合準備(22年度)に入る予定です。

 しかし、市全体では、JR木津駅東部の城山台地域で急激な人口増があり、予定した2つの園の廃園を延期している状況です。20年度当初も国基準では待機児童ゼロを標榜しますが、47人(10月には78人)が入所できず、待機児童解消の課題の点で市担当者も「(廃園実施は)計画通りにはいかない」と言います。

 実際、南加茂台保育園に子どもを預ける20代の母親は、わが子も一昨年まで「待機児童」だったと話し、「城山台から南加茂台に引っ越し、やっと入所できた。廃止せず残してほしい」と切望していました。

 党支部でアンケート調査に取り組んだ天野豊さん(70)は、地域の街づくりにとっても、保育を必要とする子どもの受け入れを保障する上でも、保育園の存続が望まれていると述べ、「広く市民に呼びかけて、存続の願いを市に届けたい」と話しています。

計画見直しを「保育の質が後退」■共産党市議団が論戦

 日本共産党木津川市議団は、「公立保育所民営化等実施計画」について、公的保育を後退させ保育の質を落とす恐れがあると指摘し反対。統合による廃園、民営化による保育所運営への不安など、市民から寄せられた100を超える意見に応えて計画を見直し、待機児童の解消を求めました。

 18年12月定例会では「公立保育園の統廃合の見直し」を求める請願が提出され、賛成討論で、障害のある子どもや配慮の必要な子どもの受け入れを担っている公立園の役割を強調し、統廃合を見直すよう要求。

 20年4月から木津川台保育園の民営化、やましろ保育園分園を廃園とする保育所条例の改正(19年12月定例会)で、反対討論に立ち、「計画は市の待機児童解消になんら役立っていない。計画を見直すべき」と主張するなど、統廃合や民営化ではなく、保育園を増やすことや保育の質の維持・向上に行政が役割を発揮するよう求めてきました。