防災の観点から建設予定地の問題点を指摘する奥西氏

 相楽中部消防組合(木津川市、笠置町、和束町、南山城村の1市2町1村で構成)の本部新庁舎建設とそれに伴い出張所を廃止する再整備計画について考えようと、住民でつくる「安心の消防を求める会」(代表=呉羽真弓、岡田眞一)が3月27日、専門家を講師に招いた学習会を木津川市内で開きました。

 同「会」は、危険で不適切な土地での新庁舎建設と出張所(木津西と山城)の廃止に反対して、広く市民に課題を知らせようと結成したものです。

 この日は、「会」の初企画。新庁舎建設が予定される「城山台9丁目1番地」の土地が、防災拠点に適しているのか、京都大学名誉教授(元京都大学防災研究所)で国土問題研究会の奥西一夫前理事長が、「防災の観点から考える」として講演しました。

 当地は、独立行政法人都市再生機構(UR)が開発困難地としたものを木津川市が約9000万円で購入した土地。住民からは、細長い急傾斜地で、災害発生リスクを心配する声が上がっています。

「民間の開発から守るために買い取った」のに・・・

 奥西氏は、同地の造成による水害、傾斜地防災について考察。市が土地購入の正当性を主張する資料で、土地の西側にある小川水系流域での内水・外水被害対策に、現状のままで保全することが効果的だと述べて、民間の開発から守るために買い取ったと強調していることを示し、小川流域の抜本的な河川改修が行われない限り、開発は許可されないはずだが、消防署の移設計画では触れておらず、「二枚舌だ」と指摘しました。

 また、庁舎建物の北側の斜面に、急傾斜地崩壊防止のための擁壁をつくる計画がされていることに触れて、「本来なら砂防指定地に戻した上で、砂防法に基づく開発許可を得なければならない」と述べました。

 結論として、市の選択は、開発してはいけない土地として塩漬けにするか、万全の防災対策をして開発するかの二者択一とし、「市の対策はすべてこれからという曖昧な態度。防災上は、完全に自然な形で残すのが基本の立場だ」と話しました。

 参加者からも、「対策費に莫大なお金をかけても安全が確保されないのなら、別の土地で建てる方が良い」との意見が出されました。

 講演に先立ち、同土地問題で住民訴訟を起こした岩田君子さん、木津西、山城の両出張所の廃止問題で呉羽さんと西嶋美奇穂さんがそれぞれ取り組みを報告しました。

 行動提起を行った呉羽さんは、「このまま市民が黙っていたら後悔する。身近な人に広めてほしい。つながり、連なり、行動しよう」と会への賛同を呼びかけました。

城山台9丁目の新庁舎建設予定地(今年1月撮影)