京都市“財政危機”キャンペーンを考える 日本共産党京都市議団「『行政改革』のあり方検討チーム」責任者・樋口英明議員に聞く
京都市は、「市民しんぶん」を使って財政危機を盛んにあおっています。日本共産党京都市議団の「『行政改革』のあり方検討チーム」責任者・樋口英明議員に、2月議会の予算委員会での論戦などを踏まえ、その主張のごまかしについて、〝深掘り〟してもらいました。
「公債償還基金」取り崩し過大計上で“枯渇”アピール
─市のキャンペーンの一つが、財源不足を補うため、将来の借金返済に充てる「公債償還基金」の取り崩しが続き、このままでは基金が枯渇するというものです
市の財政が以前より厳しくなっているのは事実です。しかし、危機をあおるために意図的に強調されているのが実態です。
昨年11月、第4回「持続可能な行財政審議会」での市の資料では、2021年度の公債償還基金の取り崩し予測額は360億円となっていました。ところが、今年2月の予算編成では、181億円に圧縮され、しかも、そのうちの123億円は新型コロナの影響によるものです。
コロナ禍での特別な財源不足とこれまでの慢性的な財源不足とは、分けて対策をたてる必要があります。それを意図的に、ない混ぜにして、とにかく「財政が厳しい」からと言って、市民の命や福祉にかかわるサービスをカットしたことは、自治体本来のあり方と相いれません。
「財源不足」は削減の口実に
しかも、取り崩し額は、毎年の決算でみると、予算時から大幅に減っています(グラフ参照)。17年度の予算では、99億円だったのが決算では28億円です。
「市民しんぶん」では、取り崩しの累計額は823億円(05年度~21年度)になり、26年には「枯渇する恐れがある」としています。しかし、20、21の両年度は決算額ではなく過大な予算額を計上したものです。予算委員会でも数字について、「現時点での試算であり、今後毎年精査していく」と答弁するなど、自らあいまいさを認めています。つまり「財源不足」は、市民サービスをカットするための口実として使われたものに他なりません。
終了事業も歳出に、投資的経費を過大に演出
─もう一つのキャンペーンが、終了する事業まで歳出に盛り込み、恣意的に膨らませた「500億円の財源不足」でした。どんな事業を盛り込んでいたのですか
市は昨年10月には、財源不足は500億円になると盛んに強調していました。予算提案時の今年2月になると、その額を236億円に半減させました。そのカラクリの一つが、投資的経費を大きく見せたことです。
例えば、工事は昨年度に終了することが分かっているのに、「前年度ベース」ということで、歳出見込みに事業費を計上するやり方です。北消防署で4・5億円、京都奏和高校(新しい定時制高校)で3・3億円などがあり、当初から必要のない事業費で、それだけで計約17億円です。
コロナ交付金を計算に入れず
一方で、歳入では、コロナ対策として国から交付される財源は「不明」として計算に入れないなど、過大な「財源不足」をキャンペーンしてきました。
市民生活応援施策は軒並み削減に
─日本共産党を除く、賛成多数で決まった今年度予算の特徴は
市民生活を応援してきた施策削減のオンパレードとなりました(表参照)。事業の休廃止は46件で計5億1800万円、補助金見直しは51件で計8億3600万円、総計約100事業、13億5400万円です。これに、介護保険料や保育料、使用料の値上げなどが加わりました。
その一方で、財源不足に陥った原因の一つ、国の地方への財政支出削減方針について、市長は肯定しています。不要不急の大型公共事業の中止・凍結には踏み込まず、法人市民税の超過課税を限度額上限の8・4%(現行8・2%)まで引き上げることにも背を向けたままです。
その上、今年度は「改革の一里塚」と言い、22年度以降も一層の市民負担増を計画しています。国の「自助・共助」の押しつけを市に持ち込むものであり、自治体の役割放棄に他なりません。
─党議員団が提案した今年度予算の組み替えや今後の打開策は
組み替え提案では、「行財政改革」の名による市民大リストラ計画を中止し、新型コロナ感染対策のための検査・医療体制の充実を行うこと、営業や事業の継続が危ぶまれている中小業者への直接支援を行うこと、市民の命と健康を守ることに最大限の力を注ぐよう求めました。
引き続き、市の姿勢を根本から転換するため、市民の運動や世論と連帯し、全力を挙げます。