利水、治水などを理由に全国で2000カ所を超えるダムがつくられてきましたが、有効性が疑問視され、自然生態系を破壊するなどとして反対運動とともにダム撤去の動きも起こっています。計画が白紙撤回された京都の鴨川ダムなど全国各地の取り組みを取材したドキュメンタリー映画『悠久よりの愛~脱ダム新時代』が7月17日、城陽市の文化パルク城陽大会議室で上映されます。

 大川上流に新月(にいつき)ダムの計画が浮上した宮城県では、川が流れ込む気仙沼湾で漁師・畠山重篤さんが、豊かな森から流れてきた水によって海の生物が育つとして、植樹運動を幅広く展開し、ダム中止に追い込んだことを紹介。宮城県の歌人・熊谷龍子(くまがい・りゅうこ)さんの和歌「森は海を 海は森を恋いながら 悠久よりの愛紡ぎゆく」から、「森は海の恋人」植樹祭と名付けており、映画のタイトルも和歌からとっています。

鴨川ダム反対運動について語る開沼淳一さん
故・開沼さんのインタビューも

 京都府で1987年に突然、計画が浮上したものの、鴨川の水源地にある志明院の田中真澄(しんちょう)住職や、哲学者の故・梅原猛さん、日本史研究者の奈良本辰也さんらが反対の論陣をはり、90年計画中止に追い込んだ鴨川建設計画について、田中住職や志明院でのコンサートで演奏したオーボエ奏者・呉山平煥(くれやま・へいかん)さん、元京都府職労(現・府職労連)役員で、昨年7月に亡くなった開沼淳一さんらのインタビューを収めています。

 開沼さんは、計画が過大な流量に基づいたものであったと突き止めたことや、府職労のアンケートに多くの府民が協力したことなどを語っています。

 また、熊本県で荒瀬ダムが出来たことで水質が悪化し、災害も増えたことから、住民が立ち上がり、ダム撤去を実現させた経験なども映像に収めています。

 監督は、食品公害事件カネミ油症事件を10年かけて追ったドキュメンタリー『食卓の肖像』の金子サトシ監督。製作は東京都の職員として公害問題に取り組み、退職後は、千曲川・信濃川復権の会共同代表や事務局長としてダム撤去や原発廃炉に向けた運動を担ってきたプロデューサーの矢間(やざま)秀次郎さん。

 これまでダム反対運動を描いた『あらかわ』(1993年)製作に協力し、プロデューサーとして原発問題を追った『シロウオ~原発立地を断念させた町』(2014年)、『いのちの岐路に立つ~核を抱きしめたニッポン国』(17年)を製作してきました。

 10年ほど前から、気候変動などもあり、ダムが治水機能を果たさず、新たな災害をもたらす事例が急増したことや、産業界の要請により、適さない場所での計画が目に余るようになったことから映画化を計画。4年前に脚本が完成し、親交のあった梅原猛さんに見せ、協力を求め、激励を受けました。2年前から撮影に入り、昨年末に完成。46年間、ダム問題に取り組んできた集大成ともいえる作品です。

 矢間さんは「これまで住民パワーで建設を阻止したのは11例(休止を含む)しかありません。そのなかで、文化の役割が大きいと感じてきました。現在、ダム建設計画に反対運動をされている全国29カ所の人々に、これまでの経験を学び、生かしてもらいたい。また、多くの人に自然再生の『脱ダム新時代』が訪れてきていることも知ってほしい」と語っています。

 『悠久よりの愛~脱ダム新時代』 7月17日(土)①10時②14時、文化パルク城陽東館4F大会議室(城陽市寺田今堀1番地)TEL0774・55・1010。上映協力券1000円。定員各回先着200人。問い合わせ℡0774・53・4893(城民懇)、℡0774・52・2550(年金者組合城陽支部)、℡0774・52・7474(新日本婦人の会城陽支部)。ホームページhttps://yukyuyorinoai.art.blog/