『僕は屈しない』

 中国政府が香港に高度な自治を認めるとした公約に反し、市民的・政治的自由を蹂躙していることに国際社会の批判を浴びるなか、香港の民主化運動にスポットを当てた「香港インディペンデント映画祭2021」が6月25日から7月8日まで、京都市上京区の出町座で取り組まれます。長編、短編あわせて25作品が一挙上映されます。

 英国領だった香港は1997年、中国に返還された際、中国政府は高度な自治を50年間認め、香港を特別行政区として本土では認められない言論・集会の自由などを保障する「一国二制度」を維持するとしていました。

 ところが政府が本土の価値観を押し付け、自治に介入するなか、2014年、若者たちが香港政府に真の普通選挙制を求めて「雨傘運動」を展開しましたが挫折。19年には、容疑者の身柄を香港から中国本土に引き渡せるようにする容疑者引き渡し条例改正案が、香港の議会=立法会で審議されようとしたことから抗議が広がり、撤回に追い込みました。

 しかし、翌年、中国全人代は、中国政府が国家安全犯罪に関して香港で管轄権を行使できるとする「国家安全維持法」を制定。民主活動家の逮捕が相次いでいます。

 同映画祭は、現在日本で生活するマレーシア出身のリム・カーワイ監督が作品をセレクトし、同監督が所属するシネマドリフターズが監督と主催。初回は、「雨傘運動」3年後の17年、東京、名古屋、大阪の3都市で開催しました。なぜ、「雨傘運動」が起こったのか、歴史的、多角的に考える機会となりました。

 今回は、その後、「雨傘運動」以上の抵抗運動が起こったことを踏まえ、大阪、京都、名古屋で開催。カーワイ監督は「『雨傘運動』の失敗から香港の若者が何を学び、死を覚悟してまで抵抗運動に参加したのかを、映画を通して知ってほしい」と訴えています。

 出品される長編作は、香港への中国政府による政治介入に対抗しようとする香港本土派の政治活動家エドワード・レオンが、16年の本土派と警察と衝突した際、実刑判決を受けた事件を追った『僕は屈しない』(17年)や、「雨傘運動」の影響を受けた家族の矛盾などを描いた名優・ベン・ユエンの初主演作『逆さま』(17年)など10作。

 このほか、民主化デモを追った短編、19年民主化デモ以後、若手新人監督による劇映画の短編、傑作短編が披露されます。 上映作品やシンポジウムの日程などは、出町座ホームページ参照。問い合わせ☎075・203・9862(出町座)。

『逆さま』