耐震化されておらず授業で使えない現在の府立大体育館

 京都府立大学や府立植物園での開発が問題になっている「北山エリア整備基本計画」をめぐり、計画の見直しを求めて運動する「北山エリアの将来を考える会」は6月26日、京都市左京区の府立歴彩館で、府立大の歴史と役割や同大の1万人規模のアリーナ建設計画の問題点を告発する講演会を開きました。オンラインなどを含めて約80人が参加しました。

 府立大の長谷川豊准教授(京都府公立大学法人労働組合執行委員長)が府立大の歴史と役割について講演。府立大のルーツである京都府簡易農学校(1895年設置)時代から、現在の下鴨地域へ移転してきた歴史について述べ、短大の廃止計画、農場の移転や返還、公立大学法人化などさまざまな問題があったとし、今回の整備計画をめぐる動きについて「第4の危機といえる状況」と指摘しました。

 現行の校舎の多くが老朽化し、耐震化率は51・7%にとどまり、耐震化されていない体育館は授業で使えない状況などを解説。「北山エリア整備基本計画」で浮上している体育館を1万人規模のアリーナとして建て替える計画について、スポーツや音楽イベントなどの利用が検討されており、「授業やクラブ活動で十分に利用できるのかが不明。人や車両の移動、騒音やセキュリティなどさまざまな問題点がある。イベント重視の施設となり、学生のための教育機能がほんの一部しかないものになるのではないか。学生の教育のための施設としていくために、みなさんと声を上げていきたい」と述べました。

尾林氏「企業収益優先で自治体の役割ないがしろに」

 自治体の民営化問題に詳しい尾林芳匡弁護士がオンラインで講演。政府がPFIなどの手法で自治体業務の民間委託を進めるなか、全国で問題が噴出しているとし、プール天井の崩落事故、集客施設の経営破綻、事業が不採算となったために民間事業者が撤退するなどの事例をあげ、「事業が失敗し負債を生んだら、住民にそのツケが回されることになる。民主的なコントロールができず、経営内容は不透明なものとなっている」と指摘しました。

 府立大のアリーナ計画など北山エリア開発計画について、「地方自治体の土地を使用して民間企業が利益をあげることが狙い。収益優先で歴史や文化、教育など自治体の役割がないがしろにされるおそれがある」とし、コロナ禍のもとで大型開発の見直しが必要だと強調し、「自治体本来の住民の福祉の増進をめざした公有地の活用を住民が主人公となってつくる必要がある」と指摘しました。

 参加した府立大の学生は、「なぜ府は学生にきちんと説明を行わないのか。経過や説明をするよう求める学生の声を届けるよう頑張っていきたい」と発言しました。

講演する長谷川准教授