瓶原を去る場面 木津川市指定文化財「袋中上人絵詞伝」下巻より(木津川市・鶯瀧寺蔵、京都府立山城郷土資料館寄託)

 琉球国(現在の沖縄)に初めて浄土教を広めた僧・袋中良定(たいちゅうりょうじょう)(袋中上人、1552~1639)の生涯を伝える絵巻「袋中上人絵詞伝」が7月11日(日)まで、ふるさとミュージアム山城(京都府立山城郷土資料館)=木津川市=で開催中の企画展「絵巻と勧進状(かんじんじょう)」で見られます。袋中が晩年過ごした南山城での足跡をたどることが出来ます。

 袋中上人は、現在の福島県いわき市で生まれ、52歳で中国へ渡る志を抱きます。琉球に行き、フィリピン・ルソンの商船に乗り換えて中国へ渡ろうとしますが、断られます。豊臣秀吉による文禄・慶長の役(朝鮮出兵)後間もない頃で、中国で日本人が警戒されていたためと見られます。琉球で尚寧王(しょうねいおう)らの帰依を受け、桂林寺(那覇市)を開き、浄土教を布教します。沖縄の踊りエイサーには、袋中の伝えた念仏歌が引き継がれているといわれています。

 渡中が叶わないと思い、多くの人に見送られ帰国。大念寺(大山崎町)、西遊寺(八幡市)、伏見に立ち寄り、三条大橋近くで檀王法林寺(だんのうほうりんじ)(京都市東山区)を建立。晩年は、奈良に念仏寺を開き、浄瑠璃寺(木津川市)の一切経修復に従事。瓶原(みかのはら)天満宮(現・恭仁(くに)神社、木津川市)の傍らに新造された心光庵に14年間住みます。重罪人の赦免(しゃめん)願いが聞き入れなかったことを悔やみ、この地を離れ、飯岡(いのおか)(京田辺市)に西方寺を建立し、この地で88年の生涯を終えます。

 企画展では、「袋中上人絵詞伝」の袋中上人が、多くの人々に見送られ琉球を去る場面、木津川で船に乗り14年間過ごした瓶原に別れを告げる場面、臨終の地・飯岡の風景などが見られます。

飯岡の風景 奥の建物が西方寺 木津川市指定文化財「袋中上人絵詞伝」下巻より(木津川市・鶯瀧寺蔵、京都府立山城郷土資料館寄託)

 9時~16時半。月曜休館。一般200円、中小生50円。11日(日)11時、列品解説。同館☎0774・86・5199。