甘い罠と大手マスコミ 菅首相の人間性、強権手法あぶり出す 映画『パンケーキを毒見する』 MOVIX京都で上映中
コロナ禍の下、開催中止を求める専門家などの意見を振り切って東京五輪を強行し、国民の批判を浴びる菅義偉首相。現役首相を題材にした日本映画史上初のドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』がMOVIX(ムービックス)京都=京都市中京区=で上映中です。
自殺者まで出して医療系大学の新設を官邸主導でゴリ押しする政府を追う新聞記者と、苦悩する官僚を描いた劇映画『新聞記者』、望月衣塑子(いそこ)・東京新聞記者を密着取材したドキュメンタリー『i─新聞記者ドキュメント─』で安倍政権下の官邸政治の闇や菅官房長官(当時)の手法を追ってきた制作会社スターサンズ(代表取締役・河村光庸(みつのぶ))が製作。
昨年9月の菅内閣の誕生を受け、今年1月から取材を始め、五輪開催予定の7月末をゴールに定め、“突貫工事”で公開にこぎつけました。
企画・製作・エグゼクティブプロデューサーは河村光庸、ベトナム戦争報道をめぐり、自民党の怒りを買って現場を外されたディレクターらが1970年に設立した制作プロダクション「テレビマンユニオン」の内山雄人が監督を務めます。
ツイッターで政権批判を続ける俳優・古舘(ふるたち)寛治がパンチの効いたナレーションを披露しています。
『新聞記者』『i─新聞記者ドキュメント─』では直球勝負で臨んだスターサンズですが、「スカスカの政権を明らかにする」と、日本の異常を風刺するアニメーションをはさむなど、変化球を交えた政治バラエティに仕上げています。
タイトルは、菅首相が就任直後、記者会見は開かないのに、オフレコで開いた記者懇談会で好物のパンケーキを皆でほおばったことをもとに付けられました。マスコミと首相との「甘い」関係を風刺しています。
製作にあたっては、次々と取材拒否にあい、コロナ禍による緊急事態宣言も出されるなど、多難を極めましたが、自民党の石破茂、村上誠一郎、立憲民主党の江田憲司・各衆院議員、日本共産党の小池晃参院議員、元経済産業省官僚の古賀茂明氏、元文部科学事務次官の前川喜平氏、ジャーナリストの森功氏、元朝日新聞記者の鮫島浩氏らを登場させ、菅首相の人間性や強権的な政治手法、目指す社会像をあぶりだします。
さらに、鮫島氏が「パンケーキ懇談会への批判の背景にマスコミに対する不信がある」と指摘し、近現代史研究家の辻田真佐憲氏が、戦時中、新聞社がそろって「大本営発表」に陥った歴史を示すなど、権力監視を怠る現代のメディアの姿勢に警鐘を鳴らすとともに、若者と政治の距離を近づけようと取り組む学生団体ivoteのメンバーのコメントも紹介し、「政治なんて人ごと」と、済ませていいのか問いかけます。
映画では、日本共産党の国会議員と赤旗の連携で政権を追い詰める姿に光を当てます。「国会パブリックビューイング」の活動をしている上西充子・法政大学教授が、学術会議委員の任命拒否問題で首相の責任を追及する日本共産党の小池晃・参院議員の質問をコマ送りで解説。その後、質問をノーカットで流しています。
「桜」疑惑スクープ赤旗編集部も登場
104分の上映のうち15分割いて「赤旗」を紹介。「桜を見る会」私物化疑惑スクープと一連の報道で昨年のJCJ大賞を受賞した日曜版の山本豊彦編集長をインタビューしているほか、首相が官房長官時代に受け取った官房機密費の額や使途などを暴露した記事の取材過程や、記事をもとに国会議員が追及する連携、白熱した打ち合わせをする編集部の風景、赤旗記者へのインタビューなど様々な角度で掘り下げています。
「赤旗の購読を申し込みます」
昨年からツイッターを始めて政治批判のコメントを上げ、「現政権批判の映画が上演される」と知って公開翌日に足を運んだという佐藤賢一さん(54)。鑑賞後「菅首相のおそろしさとともに、共産党の活動、丁寧に取材している赤旗の様子がよく分かった。明日、近所の共産党の事務所に行って赤旗購読を申し込みます」と語りました。