左右非対称が生む“表情”と“動き” 金剛流二十六世宗家・金剛永謹氏が講演 「能面100」展関連企画
金剛流二十六世宗家の金剛永謹(ひさのり)氏が1月17日、京都市北区の佛教大学オープンラーニングセンターの公開講座(京都新聞総合研究所と連携)で「能面が語りかけるもの」と題して講演。能楽の歴史や面の特徴などについて語りました。2月6日まで、美術館「えき」KYOTOで開かれている「能面100 The Art of the Noh Mask」で展示中の金剛流所蔵の面の由来なども紹介しました。
金剛氏は、能楽が奈良時代に大陸から伝わった「散楽」を源流としながら、室町中期に足利将軍の下で、世阿弥(ぜあみ)ら芸術家集団が日本独自の能楽の在り方を話し合い、大陸風の左右対称でなく、「陰と陽」のある崩し方が日本の美とする考えに到達したと指摘。面(おもて)の作風も左右非対称に変わっていったと述べ、「面の目のわずかな切り方で、上向きが陽、下向きは陰。頬(ほほ)も非対称としたことで面に表情が生まれ、動きが加わった」と話しました。
金剛流に伝わる面は南北朝期、室町期から200を超えます。江戸期の面は技術力の高さが特徴で、舞台で用いやすいものの、室町期のような力強さ、生命力には欠けると言います。美術館「えき」KYOTOで展示中の「雪の小面」について、「秀吉が晩年に所蔵した雪、花、月の小面のひとつであり、能で中心的な役割を果たしてきた面。その原本の面も所蔵している」と明かしました。
また、室町期の能番組は今と同じ台本にもかかわらず、1日に10から20も演じられていたと紹介。「時間にして半分から4分の1。テンポが早く、若者にしか演じられなかったのではないか」として、江戸期に今のようなゆっくりとした動きとなり、“神男女狂鬼(しんなんにょきょうき)”の正式な「5番立」上演の基礎が作られたと述べました。
美術館「えき」KYOTO「能面100」展は2月6日まで。午前10時〜午後7時半。一般1000円、大高生800円、中小生600円。問い合わせTEL075・352・1111(ジェイアール京都伊勢丹7階)。