京都大学は昨年末、学生・院生、教職員が利用できる福利施設京都大学保健診療所を事実上廃止し、一般診療を終了する方針を発表しました。これを受けて同診療所を利用してきた学生らでつくる「京大保健診療所の存続を求める会」は3月18日、廃止に反対する要求書を湊長博総長と同学環境安全保健担当理事宛てで賛同署名とともに提出しました。

 京都大学は昨年12月1日に突然、診療終了(吉田・宇治・桂の各キャンパス)を発表しました。職員組合や「求める会」によると、治療を受けている学生はすべて外部の民間医療機関を受診せざるを得なくなります。

 大学側は、4月以降、新設される学生相談室で精神保健相談(=カウンセリング)を開始するというものの、対応が必要と判断した学生にのみ診療所を改組する健康管理室を通して外部医療機関を紹介する予定とし、一般診療は行わない方針としています。

 これを受けて利用していた学生らは「京大保健診療所の存続を求める会」を結成。ネット署名を呼びかけ、昨年12月6日に約1100人分を湊総長などに提出しました。大学は「所属が書かれていない」として認めず、回答もしませんでした。

 職員組合も12月7日、見直しなどを求める要望書を湊総長宛てに提出。今月3日の団体交渉でもこの問題を取り上げました。

 「求める会」の今回の要求書は、診察終了の期限が迫ったため、提出することにしたもの。▽診療所の廃止と一般診療終了方針の撤回▽学生・教職員を対象として説明会や匿名のアンケートの実施―などを求めています。

 提出に先立って行われた記者会見では、同席した職員組合の大河内泰樹中央執行委員長、髙山佳奈子副委員長は「今回の発表は寝耳に水。昨年7月の部局長会議で決定されたというが、多くの教職員にも知らされていない」「保健診療所の助けを得て初めて授業に出席できる学生・大学院生がおり、(診療終了方針で)教学に支障が出る」などと発言。

 「会」のメンバーは「自分はメンタルには自信があったが、昨年夏、進路の問題と友人関係のトラブルで、動けず食事もとれない状態になった。友人に教えられて診療所に駆け込み、精神的に改善し勉学にも打ち込めるようになった」「身近にありいつでも駆け込める診療所のメリットは絶大。なくしてほしくない」「友人から診療所を教えてもらったが、なかったらどうなっていたか…」などと訴えました。

約100年の歴史、宇治・桂に分所も

 京都大学保健診療所は、1924年に前身となる学生健康相談所として開設され、49年に現在の名称に改称。約100年の歴史を誇るもの。京都市左京区の吉田キャンパスに本所、宇治(宇治市)、桂(京都市西京区)、熊取(大阪府熊取町)キャンパスに分所があり、内科、神経科を設け、学生は学生証、教職員は職員証などを提出するだけで保険証がなくても予約せずに診察が出来、薬の処方も受けられます。

 診療費は、学生や非常勤職員は相談・診察は無料で、薬代、検査費用は実費。常勤職員は文科省共済組合保険にかかる自己負担分(3割)です。大学は、2022年度の受験生向けパンフレット「知と自由への誘い」でも、「きめこまやかな制度と相談・支援体制を整えて学修・研究活動の礎となる日々のくらしをサポートします」として保健診療所の存在をPRしていました。