防護服、放射線測定機器など府「更新できない」 原発事故時の住民避難で使用、国交付金廃止で/識者「府として国の責任厳しく問うべき」
原発事故時に避難してきた住民や車両の検査・除染にあたる自治体職員の防護服など4種類の資機材について、京都府は、今後新たに購入して整備することが「できない」としていることが分かりました。購入にあてる国の交付金が2021年度から廃止されたことが原因ですが、京都自治体問題研究所・原子力災害研究会の市川章人さんは、「国の姿勢が根本問題だが、国方針に従うだけでは、職員や住民の安全は守れない」と指摘します。
資機材は、▽検査要員(府職員ら)用の不織布防護服▽高圧水や流水の洗浄機材▽車両用ゲート型モニタ(放射線を測定する機器)▽住民用ゲート型モニタ(同)—です。
避難の際、住民や車両は、道府県が設置する避難退域時検査場所で、放射線の検査や必要に応じて簡易除染を受けます。同検査場所は、京都府では丹波自然運動公園(京丹波町)など7カ所が候補地となっています。
同検査場所で必要な資機材は、国の交付金「原子力発電施設等緊急時安全対策交付金」でまかなわれています。
21年度から交付対象外、「防止や手袋で代用可」「検査効率化に資さない」
内閣府は昨年4月、この4資機材について、21年度から交付対象外とすると通知。理由は、委託研究の結果、防護服の代わりに帽子や手袋など「適切な防護具」で対応できるとともに、住民用モニタは「検査の効率化に資さない」などとしました。
国の通知を受け府原子力防災課は、4資機材について、耐用期間が過ぎた場合、「交付金が出ないため、更新できない」としています。
市川さんは、「この間、国は住民の放射線防護を変質させており、今回の措置は住民にとどまらず職員も犠牲にするものだ。府は国の方針に沿うだけでなく、はっきりもの言う必要がある」と指摘します。
「避難」よりも「屋内退避」強調、放射線防護の考え方を変質・後退
国が、住民の放射線防護について変質・後退させた典型事例では、「原子力災害対策指針」の18年7月25日の改定があります。同改定では、防護措置の「基本的考え方」を変更。具体的には、PAZ(5㌔圏内)では「確定的影響」(高線量被ばくで必ず発症する被害)について、「回避する」から「回避し又は最小化する」とし、UPZ(30㌔圏内)での「確率的影響」(がんなどを発症する確率)では、「最小限に抑える」から「低減する」と変更しました。
市川さんは、「PAZでは、「『最小化』を加えることで確定的影響を回避できない場合を容認し、UPZでは、『最小限』にしなくても『低減』すればよいことを可能にした。どちらも達成すべき目標を努力目標に変質・後退させた重大な改定であり、住民の命と安全を守る責任を投げ捨てるもの」と批判します。
さらに、国は「避難」よりも「屋内退避」を強調。同改定でも、UPZでの防護措置の基本的考え方に「屋内退避を実施する」という文言が追加されました。
市川さんは、「屋内退避は被ばくの防護効果が小さい。特に内部被ばくは、屋内退避が数時間も続けば屋外にいる場合と変わらなくなる。それにも関わらず、内閣府の広報チラシやホームページでも屋内退避が強調される事態となっている。京都府が府民・職員の命と安全を守る立場に立ち、国の責任と対応を厳しく問うことが求められている」と指摘します。