高浜原発4号機事故 根幹部分で「トラブル」、制御不能の恐れも/京都自治体問題研究所・原子力災害研究会・市川章人さんに聞く
老朽化で不具合増える 60年超運転は“危険な道”
運転開始から37年が経つ関西電力・高浜原発(福井県高浜町)の4号機が、稼働中に異常を感知したため自動停止(1月30日)しました。この事故(*)から見える問題点や岸田政権が進める老朽原発の運転延長が及ぼす影響について、京都自治体問題研究所・原子力災害研究会の市川章人さんに聞きました。
同様の事故は35年ぶり
今回の事故のように中性子量の急減による自動停止は、1988年以来のものであり、とても深刻な事故だと感じています。
事故の詳細や原因などについては、関電が原子力規制委員会に提出する報告書を待たないと分かりません。そのため一般論ですが、今回起きた事態は、原子力発電の根幹である核分裂に関わるトラブルという深刻なものです。幸いにも自動停止という安全な方向に推移しましたが、核分裂を制御できていなければ暴走する可能性もゼロではありません。
そして、老朽原発であることも事故と無関係ではないと考えます。一般的にあらゆる装置は使い始めと老朽化のタイミングで不具合や故障が多くなります。4号機は30年超の老朽原発であり、老朽化による問題が増えだす時期が来ています。
老朽化の面でいえば、3号機は4号機より約半年古く、1号機(48年)、2号機(47年)はもっと古いものです。特に1号機は脆性(ぜいせい)劣化による緊急冷却時の圧力容器の破裂が最も心配されます。
今後、この老朽化による危険性は深刻さを増します。国は60年超運転を容認しました。さらに、定期点検の効率化(日数短縮)、定期点検の実施間隔の引き延ばし、運転しながらの検査実施などを進めようとしています。
つまり、老朽原発の「徹底した酷使」という危険な道に踏み出そうとしているのです。
運転延長の認可については、法的権限が規制委員会から経産省に移されます。今後は、経産省の電力需給をもとにした判断によって、老朽原発の「利用優先」の認可になってしまう恐れがあります。
これらの改悪は、原子力規制委員会の石渡委員が60年超運転への反対意見で述べたように、「科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とは言えない」ということを強調したいと思います。
原発持つ国の大軍拡は愚行
ロシアによるウクライナ侵略を通じ、原発が存在することによる新たなリスクが示されました。欧州最大のザポリージャ原発では、大量の使用済核燃料の乾式保管施設と冷却プールと思われる場所があり、その近くにも着弾しています。
この攻撃の危険性は「核の容器を撃ち抜くだけで何千ものチョルノービリをつくり、すべてのヨーロッパを破壊できる」(ウクライナ放射線防護委員会)というものです。
現在、日本はミサイルを撃ち、相手国から打ち返される道に進もうとしています。原発への反撃を呼び込めば、福島第一原発事故をはるかに上回る規模の大惨事になる危険性があります。愚かな戦争準備はやめるべきです。
*1月30日午後3時20分頃、原子炉内で核分裂を引き起こす中性子の量が大幅に減ったことを示す警報が鳴り、原子炉が自動停止しました。制御棒駆動装置に不具合があった可能性があるとされています。