都市計画規制緩和 京のまちが危機に 研究者、弁護士らが見直し作業中断求めるシンポ
鈴木・京都弁護士会会長が特別発言「人口減少の歯止めにならず」
■広原氏「子育て支援重視の明石市に学び」
■宮本氏「『新景観政策』捨て去ることに」
■中林氏「タワマン誘導、荒れた土地利用に」
京都市が進める、高さ規制の撤廃などの都市計画の大幅見直し案をめぐり、見直し作業の中断を求めるシンポジウムが3月12日、京都市中京区で開かれました。
広原盛明・元京都府立大学学長、宮本憲一・元滋賀大学学長らが同案の問題点を報告するとともに、鈴木治一・京都弁護士会会長が特別発言し、この問題で「みなさんと一緒に活動していきたい」と連帯の訴えをしました。
主催したのは、2月6日に発表した「見直し作業の中断を求める」アピールの呼びかけ人や賛同した個人・団体による実行委員会。
片方信也・日本福祉大学名誉教授があいさつし、「見直し案の発表で、京都のまちは危機に直面している。シンポジウムを京都の危機に立ち向かって行く、スタートとしたい」と述べました。
広原氏は、市が高さ規制の廃止で高層マンション建設を促進し、子育て世代の定住を図るとしていることについて、「ハードな都市開発による地域活性化対策は時代遅れになっている」と指摘。現在、人口減少が進むもとで「持続可能な都市発展」には、「コミュニティ形成」などソフト面に重点を置く必要があると述べました。
明石市が多くの子育て支援策を実施し、神戸市から子育て世代の転出が相次いでいることを上げ、「京都市はこの事例が示す教訓に深く学ばなければならない」と訴えました。
宮本氏は、市内全域の高さ制限を強化した市の「新景観政策」(2007年策定)は市民の力によって実現した「京都市民憲章」とも言うべきものと強調しました。
見直し案は「この憲章を捨て去ることになる」と告発。併せて、東京や大阪などで行われている超高層ビルラッシュの「後追い」でしかないと批判し、「見直し案の再検討を市民参加で始めよう。歴史都市に恥じない都市政策をつくり上げよう」と呼びかけました。
この他、中林浩・元神戸松蔭女子学院大学教授が報告し、見直し案では、高さ規制を撤廃し、タワーマンションを誘導しようとしていることについて、「タワマンは、高価で若者などの居住を促すはずがない」と指摘。「規制緩和は、人口を増やさないだけでなく、荒れた土地利用を生み出す」と述べました。
同アピールの呼びかけ人の一人、鈴木氏が特別発言をしました。京都弁護士会会長名で、見直し案の撤回を求めた意見書(昨年11月28日発表)の内容を説明し、「見直し案では、市が目的とする人口減少に歯止めをかけることはできない」と指摘。「改めて各分野の専門家や住民・市民団体による審議会での答申や住民の聴取が必要」と訴えました。併せて「この問題で積極的に意見表明し、みなさんと一緒に活動していきたい」と述べました。