舞いながら太鼓をたたく奴

 「田歌の祇園さん」と呼ばれる民俗芸能「田歌の神楽」が7月14日、南丹市美山町田歌区で行われました。天狗やお多福の面をつけた地元住民が八坂神社まで練り歩き、府登録無形民俗文化財「田歌の神楽」を奉納しました。

 祭りは、約350年前に始まったとされており、毎年7月14日の正午ごろに、当番で決まる民家の「宿」を出発し、神社までを練り歩きます。

 先頭は天狗でその後を、鬼、奴、ひょっとこ、お多福、樽負い爺と続きます。鬼は子どもが、それ以外は成人男性が担当するのが習わしです。道中、3人の奴が「やとーせー やとーな」と声をあげて「奴(やっこ)振り」を披露します。

練り歩きの道中で披露した「奴振り」

 『京都の民俗芸能』(府教育委員会)によると、「奴振り」は江戸時代にきわだった扮装と動作で注目を集めた奴の振る舞いを芸能化したもので、丹波(現在の京都府中部から兵庫県中部にかけての地域)の各地に伝えられましたが、その多くがすたれたため、貴重であるとしています。

 神楽は、太鼓を乗せた神楽堂を神社の拝殿に据え、ここを舞台に太鼓や笛の音に合わせて演じられます。「三人舞」では、ひょっとこ、お多福、爺が順番に登場し、爺がお多福を追いかけるなどの滑稽芸が見られます。

 『美山町誌』によると、府内でみられる神楽の多くは伊勢大神楽の流れをひく獅子神楽ですが、「田歌の神楽」は獅子をもたずに大神楽の滑稽芸と太鼓打ちが結びついていることに、大きな特色があるとされています。

 田歌区では一時期、少子・高齢化によって神楽の担い手不足も懸念されていましたが、移住者と地元住民が力を合わせて維持してきました。今回、天狗や鬼などの演者はすべて移住者が担いました。

 同区の高井英明区長は、「私も4年前に移住してきた。外から来る人たちを歓迎してくれる地域であり、これからも一緒になって伝統の祭りを守っていきたい」と話していました。