このままでは市民の命と財産守れない 京都市の現役消防職員が危機感訴え 門川市政下で2割・381人削減
「職員は疲弊し、このままでは市民の命と財産を守れなくなる」─京都市の現役消防職員は警鐘を鳴らします。門川市政の16年間では381人の消防職員を削減し、今後の3年間でさらに82人を削減しよとしている問題をめぐり、現役職員2氏に問題点を聞きました。
京都市では07年度に1902人いた消防職員が、23年度(当初)には1521人に減少。「行財政改革計画」では、21年度から25年度までに150人削減を打ち出しており、既に68人を削減。今後82人を削減する見込みです。
取材に応じたのは消防車に乗務している田中進一さん(仮名)、事務などを担当する斎藤守さん(仮名)です。
ポンプ車乗員、国指針5人なのに「3~4人」に
国の指針では、消防ポンプ車の乗員は5人と定められています(条件を満たせば4人も可能)。両氏によると京都市では3~4人の体制となっており、「3人だと、1人が運転、もう1人が情報伝達などでその場を離れると、1人で放水することになり安全管理上問題が大きい」と指摘します。
能登半島地震に伴い京都市は、緊急消防援助隊を16日までに延べ413人を派遣。両氏は、人員削減のもとで、派遣に伴う人手不足を有給の取り消しや週休の返上で補っている状況だと指摘します。
田中さんは、「マンパワーが減らされたもと、もし京都で大規模な災害が起きたら…」と現体制への不安を語ります。両氏は口をそろえて、「災害時に消火を担えるのは、人員や装備の面で消防だけだ」と強調します。
勤務2交代制で疲弊、物損事故「増えてる」実感
「行財政改革計画」にもとづく人員削減のため23年度から、勤務体制は3交代制から2交代制へと変更されました。2交代では3交代に比べ、勤務間のインターバルが短くなるため、田中さんは「疲れがたまりやすくなっている」と指摘します。
両氏とも消防車と救急車の物損事故が増えている実感があるとして、「疲労により注意力が散漫になっていることが要因ではないか。消防士が疲れていては、助けられる住民も助けられなくなる」と危惧しています。
また、防火・防災活動や事務作業が中心の「日勤」も2交代制になり大幅に減少。職員の中には「日勤」を研修や実習にあててきた経過もあるといいます。
田中氏は、「20、30代の若手で転職する人が増えている。『ブラック企業』ではないが、若い人にとっては展望が見えない職場になっているのではないか」と肩を落とします。
人員削減の結果、消防設備の点検や高齢者宅の訪問など予防業務を担う各署の予防課の体制も縮小しているといいます。斎藤さんは「かつては各署に20人近くいたが、いまや7~8人程度。高齢者宅訪問も訪問先をしぼったり、訪問回数を減らしている」と語ります。
京都市が今後も「行財政改革」の名のもと、削減を続けようとしていることに対し、「われわれ、消防士はたとえ人数が減らされても住民のために必死に業務に励むことは変わりませんが、さらに減らされると気概だけでは乗り切れなくなります」と田中さん。斎藤さんは、「人員が減れば、十分に対応できず焼失面積の拡大なども考えられる。市民の命と財産を守るため職員を増やすべき。このままでは救える命も救えなくなる」と警告します。