シールド工事で陥没した広島市内の市道。40㍍×30㍍の範囲で2㍍陥没し、周辺の建物が傾くなどの被害が(越智さん提供)

「砂れき層」「硬軟入り混じる」広島と京都、共通する複雑な地質

 京都市街地を巨大地下トンネルが通ることになる北陸新幹線延伸計画が、15日に公示した総選挙の争点に浮上しています。市街地で同様の地下トンネル工法(シールドマシン掘削)が行われた、広島市の市道で9月26日、陥没(長さ約40㍍、幅約30㍍)や隆起、出水が発生する事故が起こり、周辺住民(55世帯90人)が避難する事態となっています。この事故の原因と、北陸新幹線延伸計画に共通する問題などについて、国土問題研究会メンバーで、日本地質学会会員・防災士の越智秀二さん(広島市在住)に話を聞きました。

越智さん

陥没と大量出水、市営住宅が傾く

 事故発生直後、現地の様子を調査してきました。陥没とともに大量の水が周辺にあふれ、周辺の市営住宅やビルが傾くなどの被害が起こっていました。住民によると事故直前には大きな振動や騒音があったそうです。詳細な原因究明とともに、一刻も早く住民が安心して暮らせる状況へ復旧させなければなりません。

 このトンネルは、浸水事故が多発する地域の雨水を流すための雨水管の設置工事で、地下30㍍を掘削していました。シールドマシンの直径は6㍍と比較的小さく、こうした大規模な事故が起こることは予測していませんでした。

 シールドマシンが掘削していたのは、基本的に固く締まった砂れき層ですが、地下構造は複雑で、浅い地層はではゆるい地盤となっており、硬軟入り混じっています。市によると、事故地点は大きな玉石混じりの硬い砂れき層です。シールドマシンの掘削で大きな振動が発生し、周辺の軟弱地盤が液状化した可能性があります。地盤が液状化すると出水が起こり、地盤沈下(陥没)が発生した可能性があります。また、この場所は河川を埋め立てた地域であり、軟弱地盤の上に建てた市営住宅やビルの重量の影響など、慎重に検証する必要があります。

 そしてシールドマシンの掘削工事には熟練した技術が必要です。地下トンネルで、前も見えず、どんな地質かも確認するのは非常に難しい。知人の技術者によると、機器の確認や掘削音を聞きながら、地質の状態に合わせて掘削や方向転換する技術が必要だそうです。技術的な問題点がなかったのかも検証すべきです。

 京都市と広島市の地質には共通点があります。広島市は瀬戸内海に面していますが、氷河期だった約2万年前には陸地であり、盆地でした。京都盆地と同様の砂れき層が多く、硬い地質と柔らかい地質が複雑に混じった地盤です。

新幹線工事はトンネル径2倍、事故危険性より高い

 京都市内で地下を掘削すれば、シールドマシンが硬い地盤に当たり、地上の住宅でも感じられるほどの振動や騒音が出るおそれがあります。掘削の影響によって、広島のような住宅地での陥没事故が起こるおそれがあります。新幹線の工事は、トンネルの直径が10㍍~12㍍と大きく、広島の事故よりも危険性は高くなります。

 広島では、広島高速5号線のシールドマシンでの「二葉山トンネル」工事が18年の開始以来、掘削機のトラブルや地盤の隆起、直上の住宅街での騒音、振動などで何度も工事が中断しています。隣の岡山県倉敷市でも12年、JX日鉱日石水島製油所の海底シールドマシン工事によるトンネル事故で5人が亡くなっています。

 地下構造は複雑で、シールドマシンによる工事は非常に高度な技術や事前調査が必要で、安全性が確立しているとは言えません。

広島市や事業者が住民説明会で配布した資料