日常を壊す権力の姿 前進座京都初春特別公演「雪間草―利休の娘、お吟」 2025年1月5日~12日、京都劇場
来年の前進座京都初春特別公演は、新作の本格時代劇「雪間草(ゆきまそう)―利休の娘お吟(ぎん)」。天下人となった豊臣秀吉が、なぜ側近の茶人・千利休に切腹を命じたのか。その謎に迫るとともに、豪華絢爛(けんらん)な衣装や美術でお正月らしさが味わえるお芝居。特別出演で利休を演じる時代劇スター・林与一さんと、利休の娘・お吟役の浜名実貴さんに、作品の魅力や見どころ、舞台への意気込みなどを聞きました。
原作の発表は日中戦争前年
原作は、歴史小説家海音寺潮五郎の初期代表作「天正女合戦」。絶対的権力者・秀吉と、何者にもおもねらず、茶道を芸術の域に高めようとする利休を対立的に描きます。同作を発表したのは日中戦争開戦前年で、軍部や政権への批判とも読み取れる気骨ある内容。
「雪間草」では、豊臣秀吉に重用された利休が、無謀な朝鮮出兵をいさめたことで切腹を申し付けられるまでを描きます。
脚本は、朱海青さん、演出は、鈴木龍男さん。豊臣秀吉役を嵐芳三郎さん、利休の弟子・山下宗三役を河原崎國太郎さんが演じます。
「秀吉の時代を借りながらもどこか現代を描いています。戦争や被災で苦しんでいる人がいるなか、日常を守ることの大切さ、難しさに思いをはせていただければ」と浜名さん。
名優だった父(林敏夫)が、太平洋戦争終戦2日前、旧「満州」で戦死した林さんは語ります。「演劇とはいつの時代もそのときの政治批判をするもの。この作品は、政治家の先生方に見てほしい。よそを成敗するより、日本の国をちゃんとしなきゃいけないことが描かれているので」
曾祖父が歌舞伎役者の初代中村鴈治郎という歌舞伎一家に生まれ、自らも舞台に立った林さん。俳優となった後、前進座の中村翫右衛門さんや中村梅之助さんから出演を依頼されましたが、スケジュールが合わず、前進座の舞台の出演は今作が初めて。
浜名さんは、「時代劇のスターだった林さんと共演できてすごくうれしい。梅之助さん亡き後、大先輩と共演する機会がなくなったので、役者の心得や役作りなどを間近で拝見できて団員みんなが学ばせてもらっています」と言います。
踊りの名手と言われた祖父・二代目林又一郎に舞踊を学び、親戚の俳優・長谷川一夫や共演した美空ひばりらから基礎を厳しくしこんでもらったと感謝を述べる林さん。
立つ座る歩くに利休らしさ
「商業演劇で架空の人物を演じることが多く、自分の内面にいろんなものを作り込んで実在の人物を演じる機会があまりなかった。今回、役作りに初めて悩んだ。夢にまで出てくる」と言います。
とくに、立つ、座る、歩くという基本的動作に、どう茶人らしさ、利休らしさを醸し出せるか腐心しています。
「この役ができなかったらぼくの67年の芸歴は無駄になる。何かこれまでの経験を生かした利休像をつくらなければいけない」
並々ならぬ決意で京都の舞台に臨みます。
来年1月5日から12日まで、京都劇場(京都駅ビル内)。1等席10000円、2等席5000円、3等席3000円。申し込み☎06・6212・9600(平日10時~17時)。京都府日本共産党後援会の「新春観劇のつどい」は12日15時半(15時開場)。後援会料金1等席7200円、2等席4000円。申し込み☎075・211・5371(京都府日本共産党後援会)。