日本の高等教育支出、国際的に異常な「私費」依存 本田由紀氏「『受益者負担』の構造変えよう」/龍谷大学で学費問題講演会
本田由紀・東京大学教授を招いた、高すぎる学費の問題について考え合う講演会が1月10日、京都市伏見区の龍谷大学深草キャンパスで行われ、180人が参加し、オンラインでも60人が参加しました。学生や教職員でつくる実行委員会が主催したもので、龍谷大学と同大教職員組合が後援しました。
入澤崇・龍谷大学学長があいさつ。大学として高学費問題を考える企画に取り組んだことが「初の試みになったのではないか」と述べた上で、「大学、教育の本質は、自分の頭で考え、行動すること。その前提となる経済基盤を固めないと前進できない。いま国が教育費よりも軍事・防衛費に莫大な予算を付けている状況です。みなさんと同じ方向を向いて、もっと公費助成を強く求めていきたいと考えている」と述べました。
本田氏が「限界を迎える日本の大学費用負担構造」と題しオンラインで講演。OECD(経済協力開発機構)の2022年の調査報告で、日本の高等教育について、私費(自己)負担の割合が67%と、OECD平均31%を上回っていることや、高等教育を受ける学生の79%が私立大に在籍(OECD平均は17%)していることなどの特徴を示し、「日本は、高等教育への支出が少なく、圧倒的に私費に依存するという国際的に異常な構造。この構造が大学の教育・研究機能を弱体化させている」と批判しました。
大学の授業料が高騰していく一方で、国の大学や学生への支援がまったく行き届いていない実態を示し、「自民党という保守政党が長年政権を握り、『受益者負担』を押し付けてきた。この構造が維持不可能な現状になっている。日本の社会構造を大きく変え、無償・低廉な教育制度にして、どんな家庭に生まれても将来を展望できるような機会を若者に与えるようにすべき」と強調しました。
主催者の学生が「大学で学ぶための費用負担の問題は社会の在り方の問題であることが分かった。立場を超えて、高等教育への公的支出を増やす機運を高めていきたい」と述べました。
入澤学長が同大学の学生食堂で取り組んでいる100円で夕食を食べられる「百縁夕食」の取り組みを紹介。また、昨年11月に取り組まれた食料支援活動の中での学生アンケートの結果が報告されました。