賠償責任を求めてユニチカを提訴した河合さん(中央)=1月20日

 繊維メーカーの日本レイヨン株式会社宇治工場(現ユニチカ宇治事業所)で働き、アスベスト(石綿)により中皮腫を発症した河合敏彦さん(73)=宇治市=が、雇用主であった同社に対し、アスベストの危険性が予見できたが、ばく露防止など安全対策を怠ったとして、損害賠償を求める訴訟を京都地裁に提起しました。石綿被害で、同社の元労働者が同社の責任を問うのは初めてです。

被害者の掘り起こし、救済のため提訴決断

 1月29日に京都地裁内で記者会見を行った河合さんは、当時の同僚のなかに呼吸器の病気になった人、健康管理手帳を持つ人もいると述べ、「病気になってもそれがアスベストによる被害だとは多くの人に知られていない。救済のため、(会社への提訴を)決断した」と話しました。

 河合さんは1969年に同社に勤務し、10年ほど石綿粉じん作業に従事。2023年9月に悪性胸膜中皮腫を発症し、翌24年3月に労災が認定されました。

「工場労働者型」として国に提起した賠償訴訟では11月、国が責任を認めて和解が成立しました。

 同席した京都労災職業病対策連絡会議の新田昌之会長は、日本製鉄では各製鉄所に石綿健康相談窓口を設け、退職者に会社ホームページで案内もしているが、ユニチカは対応や協議を求めても被害者を掘り起こす立場を示していないと指摘。「会社の責任を認め、被害者に謝罪してほしい」と述べました。

 弁護団、支援者らは、アスベストによる健康不安や被害の相談を受け付けています。連絡先075・256・1891(京都弁護団)。