宇治市に申し入れる「やましろ健康医療生協」の河本理事長(中央)ら(2月13日)

汚染状況把握・原因究明・血液検査実査を 宇治市に申し入れ

指針値超の住民への支援も要請

 宇治市の「やましろ健康医療生活協同組合」(河本一成理事長)は2月13日、昨年実施した住民87人の血液検査の結果、PFAS(有機フッ素化合物)の血中濃度について、3割~6割程度の住民がドイツや米国の評価機関の健康リスクに関する指針値を上回ったことを明らかにしました。同日、宇治市に対し、汚染状況の把握や原因究明、無償の血液検査の実施、血中濃度の高かった市民への相談受け付けと支援などを求めて申し入れました。

 国は2020年に水質の暫定目標値を、PFASのうちPFOAとPFOSの合計で1㍑あたり50㌨㌘に設定。

22年に陸自宇治駐屯地で暫定目標値17.4万倍検出

 宇治市では21年度に、宇治浄水場で49㌨㌘を検出。22年7月には防衛省が、陸上自衛隊・宇治駐屯地で暫定目標値の17万4000倍を検出したと発表していました。

 これらの事態を受け、同医療生協では「あさくら診療所」(宇治市)の協力のもと、昨年1月に希望者への血液検査を実施。検査結果を京都大学の原田浩二准教授が分析しました。

 血液検査ではPFAS13種類を測定対象とし、主な4種類(PFOS、PFOA、PFHxS、PFNA)について結果をまとめました。4種類は、欧州食品安全機関でリスク評価に用いられるとともに、米国の飲料水の基準(1㍑あたり4㌨㌘)に設定されています。

 測定の結果、全員から4種のPFASを検出。最大で、4種合計は1㍉㍑あたり67・3㌨㌘(平均24・9)、PFOSは28・3㌨㌘(平均10・8)、PFOAは15・1㌨㌘(平均6・9)でした。PFOAとPFOSの合計で最大41㌨㌘(平均17・8)でした。

 他にPFAS汚染がみられる東京都多摩地域や沖縄県、大阪府での血液検査結果との比較では、PFOAは東京と沖縄より高く、PFOSは大阪より高くなりました。4種の合計でも東京、大阪より高くなりました。

 泡消火剤に使われるPFHxSの血中濃度から、泡消火剤の水道水への影響が示唆されるとしました。また、特徴としてPFNAが平均的に高いことから、地域特有の暴露があり得ると結論づけました。

 血中濃度について、ドイツ環境庁専門委員会の指針値(*1)を25人が超えるとともに、米国科学・工学・医学アカデミーの指針値(*2)を59人が超えており、全体として健康リスクを考慮すべき対象が3割から6割程度いたことを示しているとしました。

 総論として、複数の汚染要因があり得ると考えられ、水道水以外からの暴露の積み上げ評価が必要だと指摘。検査を受けた住民の年齢層が高かったため、若年層での検査の実施も必要であるとした上で、今回の検査で米国の指針値を超えた住民への相談・診察が必要であると訴えています。

 13日には河本理事長らが、宇治市に対し結果を報告するとともに、▽地下水、河川、土壌の検査および汚染原因を究明し、汚染防止対策を講じる▽希望する市民への無償の血液検査の実施▽血中濃度が高い市民への支援─などを要望しました。要望には日本共産党の宮本繁夫、谷上晴彦両市議が同席しました。

 *1 1㍉㍑あたりPFOS20㌨㌘、PFOA10㌨㌘(妊娠可能年齢の女性はそれぞれ半分の値)

 *2 1㍉㍑あたり7種類のPFAS(PFOS、PFOA、PFHxS、PFNAなど)の合計値で20㌨㌘