街頭で「北陸新幹線延伸ストップ」を呼びかける倉林(左)、堀川両氏

 7月の参院選で、京都選挙区(改選数2)で3期目の当選を目指す日本共産党の倉林明子参院議員(副委員長)は2013年の初当選以来、自民党政権と正面対決し、国民の運動と連帯して、命と暮らし、平和を守る論戦を行ってきました。倉林議員の国会論戦と実績を期待の声とともに紹介します。第1回は府内を縦断し、京都の暮らしや産業、文化、環境に大打撃を与える北陸新幹線延伸計画問題です。

新幹線より暮らし応援「延伸中止」へ奮闘

 「物価高で市民の生活は厳しく、能登半島地震の復興も進んでいない。そのもとで最大5兆円以上かけて北陸新幹線を建設している場合でしょうか。暮らし応援のために税金を使うべき。きっぱりと延伸は中止を」。倉林議員は1月4日、京都市中京区で行われた同党府委員会の延伸計画中止を求める30万署名のスタート宣伝で力強く訴えました。

 府内を縦断する北陸新幹線延伸計画を巡っては、地下水の枯渇や大量の残土が排出される問題、5兆円以上の建設費など問題が山積。府内各地で住民運動が取り組まれるなか、京都仏教会は「千年の愚行」と厳しく批判し、再考を求めるなど、延伸中止を求める声は広がり続け、自民、公明両党でつくる与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(与党PT)と政府は、目標としてきた「2025年度中の着工」を見送る事態へ追い込まれています。

 倉林議員は住民運動と連携しながら、延伸計画の問題点を追及してきました。昨年12月23日には、倉林議員の働きかけで、「北陸新幹線京都延伸の環境アセスの一旦停止を求める会」などの市民グループが、国土交通省と鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対し、オンラインで聞き取りを行いました。

「1」未満の建設なし国交省が認める

 同会のメンバーが、整備新幹線の「着工5条件」(①安定的な財源見通しの確保②事業採算性③投資効果④JRの同意⑤並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意)に照らして、延伸計画の問題点を指摘。「小浜ルート」では、同ルートを選定した17年時点の費用便益比(経済効果などの便益費を当時の建設費2・1兆円で割ったもの)が「1・1」であり、現在の最大5・3兆円に膨れ上がった建設費では1を割り込むことが確実で、単純計算で0・43となることを追及すると、国交省側は「ルートが決定されてから需要予測などを行うので、仮定の質問には答えられない」などと回答。これに対して、倉林議員は、「過去に費用便益が1を下回って建設された新幹線があるのか」と問うと、国交省は「ありません」と述べるなど、延伸計画が破綻していることを明らかにしました。

国交省と鉄道運輸機構にオンラインで聞き取りを行う、倉林議員(左上)と「北陸新幹線京都延伸の環境アセスの一旦停止を求める会」などの市民グループ(24年12月)
石田氏

石田氏 「常に市民の立場で追及。役割大きい」

 倉林議員はこうした政府への聞き取りや申し入れなどを何度も行ってきました。日本共産党の府議団・京都市議団や府内の地方議員とも連携し、聞き取りや申し入れなどを行っています。

 23年5月の参院行政監視委員会では、建設費が当初の2兆1000億円を大きく超えることになると追及。「着工5条件」を満たさないことを繰り返し指摘し、「北陸新幹線延伸よりも在来線の利便性の向上こそ行うべき」と迫りました。

 22年には、環境影響評価(アセスメント)の受け入れを南丹市美山町の住民らが拒否するもと、与党PTの高木毅委員長(当時/自民党元衆院議員)が、アセスが完了していなくても着工が可能という認識を表明。その直後の同5月26日に倉林氏は国交省にオンラインで聞き取りを実施し、アセス未完了での着工は「法的に難しい」と回答を得ました。こうしたもとで、与党PT、政府が当時目指していた「23年度当初の着工」は見送られることになりました。

 この間、府内で22の延伸計画に反対・見直しを求める団体が結成されています。各地で学習会開催や署名運動などの活動が広がっています。

市民デモで共に声上げ

 倉林議員は、住民運動に積極的に参加。昨年12月に京都市内で行われた「北陸新幹線京都延伸ストップ! 市民デモ」にも駆けつけ、310人の参加者とともに「京都の地下水を守ろう」「京都の地下に巨大トンネル」と声を上げました。

 倉林議員とともに、政府との交渉などに参加してきた、「アセス停止を求める会」の石田紀郎さん(市民環境研究所代表)は、「3人で始めた運動でしたが、倉林さんは国交省などとの交渉の窓口になってくれています。常に市民の立場に立ち、延伸計画の問題点の本質を見抜き、追及してきた倉林さんの役割は非常に大きい。絶対に必要な議席。延伸中止へともに頑張りたい」と語ります。

■他党の主張は・・・

自民 延伸計画主導、「着工5条件」無視

維新 吉村代表「知事としては小浜ルート」

立憲 「現行の『小浜ルート』が基本」と主張

 参院選の争点となっている北陸新幹線延伸計画を巡り、延伸計画そのものの中止を訴える日本共産党の倉林明子議員と、他党の違いは鮮明です。

 現職の自民党・西田昌司氏(自民党府連会長)は、与党整備委員会の委員長を務めるなど、同延伸計画を主導してきた人物。「もうからないとか、採算性が悪いとか言っていたら、永久に地方の新幹線計画は実現できない」(『京都』24年12月10日付)などと述べ、費用便益比などの「着工5条件」を無視した発言を繰り返しています。

 また、延伸計画に懸念を表明した松井孝治京都市長に対しては「北陸新幹線についてはもう少し事実関係を確認した上で発信していかないと自分の首を絞めることになる(松井市長が言う地下水への影響などの懸念は)市の大型公共事業でも同じだからだ」(『京都』7日付)と脅しのような発言もしています。

 京都選挙区で新人候補を擁立している維新は、前原誠司共同代表などが、「米原ルート」への見直しを要求しています。一方で、同党の吉村洋文代表(大阪府知事)は、「知事としては小浜ルート」「私は米原ルートありきではない」などの発言を行うなど、態度が割れています。

 候補者を擁立予定の立憲民主党は、昨年12月の記者会見で、与党が主導するルート選定に関し、野党の国会議員らも関与できるよう国に求める一方で、「現行の『小浜ルート』が基本」などとしています。

 日本共産党は、これまで5回の提言・声明を発表して問題点を指摘し、キッパリと延伸中止を要求。倉林議員は、新幹線延伸よりも「サンダーバードの金沢までの復活など在来線の強化、路線バスをはじめとした地域公共交通の充実こそ必要」と訴えています。

 

長野氏

南丹市美山町田歌在住、「美山町知井の新幹線問題を考える有志の会」代表、神戸大学准教授 長野宇規さん

延伸計画の不合理ただす一番の力 

 当初から費用便益比が1・1しかない現行ルートはありえないと指摘してきましたが、建設費の高騰などでついには1を大幅に下回ることになりました。残土処分を巡っては、ヒ素などを含む要対策土が推定3割に及ぶことが明らかになりましたが、いまだに具体的な処分方法は示されていません。

 そもそも、現行ルートは与党PTの密室協議で決められ、決定に至る経緯や合理的な選定理由は示されないままです。こんなことがまかり通っていいはずがありません。

 計画推進の先頭に立つ西田昌司参院議員は、全国に新幹線を張り巡らせれば日本が再興するというお考えのようですが、こんな時代錯誤の政治家には退場してほしいと思います。国民生活が困窮しているもとで、借金によって大型公共工事を乱発するこれまでの政治を続ければ、日本は破綻してしまいます。

 そして、西田氏が、住民との合意形成を図るという民主的プロセスを軽んじてきたことも許せません。

 倉林さんは、市民団体による国交省への申し入れをサポートしてくれるなど、延伸計画に不安や疑問を持つ住民に真摯に向き合ってくれたと思います。

 また、困っている住民の意見を吸い上げるとともに、政府の言動をチェックし、法律や制度がおかしいときにはそのことを問う、という国会議員として最も求められる仕事を一番してきたのが共産党議員だと思っています。

 倉林さんの再選で、現行ルートの撤回とともに、議会制民主主義の健全性を守ってほしいと願っています。