人形や影絵を使い朗読劇で演じる舞台 撮影:向坂典子

 小説家の故・水上勉が立ち上げた「若州人形座」が3月29日(土)午後2時から、京都市上京区の府立文化芸術会館ホールで水上作品「ブンナよ、木からおりてこい」を人形や影絵を使った朗読劇で上演します。

 水上勉(1919~2004年)は「飢餓海峡」「五番町夕霧楼」などの作品で知られ、故郷の福井県大飯郡に文学館「若州一滴文庫」を設立。若州人形座は、同館を拠点に全国各地で水上作品を竹人形文楽で上演しています。

 今回上演する「ブンナ─」の原作は「長編童話」で、冒険好きのトノサマガエルのブンナが主人公。ブンナが登った木がトンビの餌の貯蔵場所で、トンビに捕まったネズミやスズメたちが生き抜くために切羽詰まったやり取りをする様子をブンナが見聞きし、命の尊さについて考え、成長するストーリーです。

 若州人形座ではこれまで大人向け作品を扱ってきました。昨年、水上勉没後20年を迎え、その特別企画として、子どもたちから大人まで楽しんでもらおうと「ブンナ─」に初挑戦します。

 4人の語り部(飛鳥井かゞり、静永鮮子、くぬぎ森子、工藤琢人の各氏)が生き物たちを朗読で演じ、人形や影絵を操ります。

 水上は原作巻末に「母たちへの一文」を添え、「母親や子どもとともに、この世の平和や戦争のこと」や、生きていく上での「大切なことについても、考えてみたかった」と記述しています。

 出演者の静永さんは「登場する生き物たちは水上作品らしく、みんな〝人間臭く〟て、精いっぱい生きようとしています。命や生きることについて、子どもも大人も一緒に考えてもらえたらうれしい」と話しています。

 入場料前売り・一般2000円、高校生以下1000円(当日各500円増)。問い合わせ☎075・222・1046(文芸会館)。