「気候訴訟」で社会を変える 日本、韓国、台湾の若者らがシンポで交流/“地球沸騰化”でも石炭火力・原発維持「未来見えない」

国や企業等に対して、気候変動対策として科学に基づいた二酸化炭素排出削減を求める「気候訴訟」が東アジアでは、韓国、日本、台湾の各国で進んでいます。この3カ国の原告、弁護団らが同訴訟の目的や意義、課題について考える国際シンポジウム「気候訴訟で社会を変える」(気候ネットワーク主催)が3月8日、京都市内で開催され、オンラインを含めて200人が参加しました。
火力発電事業者など10社提訴
日本では、北海道から九州まで10代、20代の16人が原告となり、日本最大の火力発電事業者である株式会社JERA(本社東京都中央区)など10社を相手取った「明日を生きるための若者気候訴訟」が昨年8月から名古屋地裁でたたかわれています(次回口頭弁論は5月22日の予定)。
また、韓国では、2020年に若者ら約250人が提訴し、昨年8月、憲法裁判所が同国のカーボンニュートラル枠組法に2031年以降の温室効果ガス削減計画が定められていないことは「基本的人権の擁護に反する」として憲法違反との判決を下しました。
第1部では、「若者気候訴訟」原告でもある宮澤カトリンさんを司会に、日本、韓国、台湾の原告らがそれぞれ気候訴訟に「なぜ参加したのか」を報告。26年2月末までの法改正を求める画期的判決を勝ち取った韓国訴訟の原告、キム・ボリンさんは、同国の気候正義を求める団体「Youth 4 Climate Action」のメンバーとして韓国政府やソウル市の気候変動対策の意思決定者に直接、石炭火力発電の撤廃などを働き掛けたものの政策転換に至らなかったことが契機と述べ、「原告だけでなく社会レベルの利益に関わる訴訟。辛辣な批判だけでなく、世論の支持を得るメッセージングも重要だった」と語りました。
「若者気候訴訟」原告の二本木葦智さんは、「地球沸騰化」と言われる事態にも関わらず、石炭火力を維持し、超長期的に環境破壊となる原発に再び回帰する状況に「未来が見えず苦しい」と述べ、「政治や企業が動かない下で司法の判断に期待したい」と訴えました。
夏場、屋外での活動制限や豪雨、山火事等による人的・物的被害など気候変動による人権侵害を、より当事者性の高い若者が原告となり訴えることに「意義を見出した」と言う、同原告の川崎彩子さんは、「日常生活への影響にとどまらず、私自身、気候不安に苦しんでいる。原告だけのたたかいにせず、いかに多くの人の『ストーリー』にできるかが大事。日本でも声を上げれば変えることができるというきっかけにしたい」と意気込みを語りました。
企業も国際水準での排出削減義務を
第2部では、気候訴訟で弁護団に加わる各国の弁護士らが、東アジア地域での同訴訟の課題や連携の可能性について意見を交わしました。
「若者気候訴訟」弁護団の小出薫弁護士は、若者が原告となっていることについて、「将来にわたって気候変動の影響を強く、長くが受ける。世代的不平等を問う」と説明。被告10社が日本のエネルギー起源CO2の3分の1を排出し、各社とも削減目標が不十分か、目標自体がないと述べ、「日本の気候変動対策のかなりの部分を握る存在。原告に対するさまざまな権利侵害とともに、企業も国際水準での排出削減義務を負うことを求め、大幅な削減の実現と政府の政策転換を図りたい」と述べました。