京都 町家の草木

甘野老

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アマドコロ【ユリ科ナルコユリ属(アマドコロ属)】

 小さな鈴を綺麗に並べて吊したような白い花。その一つ一つの花はいずれ夏になると黒くて丸い実となってぶら下がる。

 アマドコロは裏庭のほぼ中央、椿の根元に群生している。高さ三十センチほど。
 この植物のことを幼い頃は気にもかけなかった。それほど控えめでおとなしい植物。花の後には小さな丸い実をつける。初めは艶のない緑色で、夏頃になって熟すると黒くなる。この実は割れたり爆ぜたりすることなく、ひと夏中しおらしく黒く丸い実を雫のようにぶらさげている。猫か鼬か飼い犬のいずれかが傍を通って実を落としてくれるのを待っているかのように。
 そんな風だから、生息地を移動することはない。まして落ちた実が必ず芽を吹くほど繁殖旺盛でもない。
 年のいったものほど葉の枚数と花の数を増やしてゆく。
 アマドコロに春雨の玉が光る風情は忘れがたい。
2009年4月 9日 12:40 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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