京都 町家の草木

エビネ

エビネ
エビネ【ラン科エビネ属】

 エビネは球根の形状が海老の背に似ているところからきている。湿地を好み、裏庭でも樹木で日が遮られる場所に群生している。高さ三十センチほど。

 きっと、父がどこかで苗を貰ったのだろう。楚々としてそよ風に小さく応えるような花が好きだから。
 春は桜や桃など、木々の花が目を引くけれど、雑木の下にこそ春を待ちわびた草花が木陰で土の温まったことをおしえてくれる。
 赤みを帯びた褐色の花弁がしゃらしゃらと俯せてしおらしく咲き、その葉は縦に深い皺を残して、あたかも伸びきれないままでいる。葉の色も白っぽく、いくつもの花を開花させていても静かな立ち姿をしていて、うっかりするとその前を通り過ぎてしまいそうになる。
 裏庭のエビネは、その株数を増やすでもなく減らすでもなく、毎年同じ場所に同じように姿を見せる大変好ましい植物。
2009年4月17日 10:00 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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