ジャーマンアイリス【アヤメ科アヤメ属】
花びらを柔らかくほどいて魅せるジャーマンアイリスは、祖母の忘れ形見のひとつ。
扇形に広がる葉のあいだから、すっくと茎を伸ばしてふくよかな姿を次々とみせる。しばらく手入れが行き届かず、もうずいぶん株数が減ってしまったけれど、一昨年あたりから再び気持ちを向けてやると、ちゃんと応えてくれた。
そう、「植物は嘘つかへん」。祖母の口癖だった。
花びらを柔らかくほどいて魅せるジャーマンアイリスは、祖母の忘れ形見のひとつ。
扇形に広がる葉のあいだから、すっくと茎を伸ばしてふくよかな姿を次々とみせる。しばらく手入れが行き届かず、もうずいぶん株数が減ってしまったけれど、一昨年あたりから再び気持ちを向けてやると、ちゃんと応えてくれた。
そう、「植物は嘘つかへん」。祖母の口癖だった。
祖母はハイカラな花が好きだった。いかにも舶来ものの華やかさが祖母のいたかつての庭にはあった。静かに暮らす祖母の別な一面を垣間見るおぼえがした。
祖母の好んだ洋花。ラナンキュラス、ダリア、ガーベラ、バラ、そして、ジャーマンアイリス。
皐月晴れの午後の庭には、もんぺ姿の祖母。やさしい彩りの花々と伸びた草木の葉の間には、身をかがめて草むしりする祖母の背中が見え隠れしていた。そして、祖母の近くには飼い犬のマリも必ずいた。
小学校から戻ると、ときどき祖母のお手伝いをしたけれど、それはきまってマリの機嫌の良いときだけ。マリは気まぐれに幼い私たちに牙を見せることがあったから。きっと、お婆ちゃんを横取りされると思ったのに違いない。すごく焼き餅焼きだったから。
祖母の好んだ洋花。ラナンキュラス、ダリア、ガーベラ、バラ、そして、ジャーマンアイリス。
皐月晴れの午後の庭には、もんぺ姿の祖母。やさしい彩りの花々と伸びた草木の葉の間には、身をかがめて草むしりする祖母の背中が見え隠れしていた。そして、祖母の近くには飼い犬のマリも必ずいた。
小学校から戻ると、ときどき祖母のお手伝いをしたけれど、それはきまってマリの機嫌の良いときだけ。マリは気まぐれに幼い私たちに牙を見せることがあったから。きっと、お婆ちゃんを横取りされると思ったのに違いない。すごく焼き餅焼きだったから。