バラ【バラ科バラ属】 祖母が亡くなってからずっと長い間、庭の薔薇は自然に任せっきりになっていた。
世話をしてくれるもんぺ姿の主が庭から消えてしまってからというもの、チュウレンジ蜂の幼虫に葉を食べ尽くされ、はたまた病気になって葉を落とし、枝は剪定されることも忘れられた。
それでも「私、ここにいるわ」と、精いっぱい背伸びをした枝先には、いつも一輪の花があった。
そして、祖母を想った。
世話をしてくれるもんぺ姿の主が庭から消えてしまってからというもの、チュウレンジ蜂の幼虫に葉を食べ尽くされ、はたまた病気になって葉を落とし、枝は剪定されることも忘れられた。
それでも「私、ここにいるわ」と、精いっぱい背伸びをした枝先には、いつも一輪の花があった。
そして、祖母を想った。
今、この花の世話をしながら、かつて祖母と花々が交わしていた心のつぶやきを聞くような気がする。
豊富な肥やしが大好物の薔薇は、お世話されるのも大好き。そのぶん、立派な蕾をつける。朝露に濡れた大きな花は枝先を深々とお辞儀させて「さあ、早く私を一輪挿しにいけて、傍で眺めてちょうだい」と、大袈裟に言わんばかり。
でも、長い間ほったらかしにされて肥やしを充分に与えられなくとも、薔薇は忘れられた訳ではなかった。しおらしく咲いた花は、必ず母の心には届いていた。
「ほら、見とおみ。お婆ちゃんの薔薇が咲いたえ。ええ香りやなあ。」
嬉しそうに薔薇の花を器に挿す指先は、いつも優しさに溢れている。
祖母と母と子。それぞれが花と語らっている。
豊富な肥やしが大好物の薔薇は、お世話されるのも大好き。そのぶん、立派な蕾をつける。朝露に濡れた大きな花は枝先を深々とお辞儀させて「さあ、早く私を一輪挿しにいけて、傍で眺めてちょうだい」と、大袈裟に言わんばかり。
でも、長い間ほったらかしにされて肥やしを充分に与えられなくとも、薔薇は忘れられた訳ではなかった。しおらしく咲いた花は、必ず母の心には届いていた。
「ほら、見とおみ。お婆ちゃんの薔薇が咲いたえ。ええ香りやなあ。」
嬉しそうに薔薇の花を器に挿す指先は、いつも優しさに溢れている。
祖母と母と子。それぞれが花と語らっている。