京都 町家の草木

どくだみ

ドクダミ
ドクダミ【ドクダミ科ドクダミ属】
 放っておくと増えつづけ、引き抜こうとしても地中深くに張った根は途中で切れてしまう。地中に残った根は、どこまでもどこまでも暗闇を這うて、その先々で芽を吹かせて増殖する。撲滅作業をなかばあきらめ、伸びるどくだみを眺めていると、仕舞いに白い花が咲き始める。

 おや。そうなると、この草も悪くない。
 癖のある強い香りに纏いつかれながら、かがめていた腰を伸ばして一休み。細長い根掘りを傍らに置く。
 もう、花が咲き始めている。
 重たく湿気を含んだ季節に移り変わると、この草の匂いと白い花が遠い思い出を押し開く。
 庭が夜に沈み込んでゆく時分。地虫が声を長くひきずっているような宵には、どくだみの白い十文字の花がぽつりぽつりと浮かんで見える。
2009年5月25日 15:12 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

京都 町家の草木の新着

コメントを投稿

コメントは、京都民報Web編集局が承認するまで表示されません。
承認作業は平日の10時から18時の営業時間帯に行います。




メールアドレスは公開されません



京都の集会・行事